「卵の質」をできるだけ下げないために私たちが培養室(ラボ)で毎日行っていること
更新日時:2026.08.31
不妊治療を続けていると、一度は耳にする言葉ではないでしょうか。採卵しても受精しなかったり、胚盤胞まで育たなかったりすると、「自分の卵子にはもう力がないのでは」と不安になる方もいらっしゃると思います。
まず、私たち胚培養士がお伝えしたいことがあります。
採卵された卵子そのものの「質」を、培養室の技術によって後から良くすることはできません。
年齢などに伴って生じた卵子の変化を、採卵後に元に戻すことはできないからです。
では、培養室には何ができるのでしょうか。
私たちができるのは、採卵された卵子がその時点で持っている力を、できるだけ損なわないことです。そして、受精に用いる精子を適切に選び、受精後の胚を安定した環境で培養することです。
卵子の力を「上げる」のではなく、本来持っている力をできる限り保ったまま、次の段階へつなぐ。
これが培養室の重要な役割です。
卵子や胚をできるだけ安定した環境で扱う
そのため培養室では、適切な環境をできるだけ一定に保ち、不必要な変化を与えないことが重要です。
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温度・ガス・pHを安定させる
インキュベーターでは温度やガス濃度を管理し、培養液のpHが安定するようにしています。
また、採卵や顕微授精など、インキュベーターの外で行う操作についても、環境変化をできるだけ小さくし、操作時間を必要最小限にします。
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タイムラプスインキュベーターを活用する
当院では、先進医療である「タイムラプス撮像法による受精卵・胚培養」を実施しています。
タイムラプスインキュベーターでは、培養器の中に設置されたカメラで胚を観察できるため、観察のために胚を外へ取り出す必要がありません。
そのため、温度やガス環境の変化をできるだけ抑えながら培養し、受精から胚盤胞までの発育を継続的に観察することができます。
胚を安定した環境からなるべく動かさず、その発育を詳しく見守るために活用している技術です。
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培養室の環境を管理する
培養室では、空調やフィルターによって空気の清浄度を管理し、胚培養に影響する可能性のある粒子や揮発性有機化合物(VOC)などにも配慮しています。
木場公園クリニックはJISART認定施設です。認定審査では、インキュベーターの管理、アラームや停電時のバックアップ、検体の取り違えを防止する仕組み、スタッフの教育・技術評価など、培養室の運用体制が確認されます。
大切なのは設備そのものだけでなく、それを適切に管理し、異常がないことを日々確認する仕組みです。
卵子と出会う精子を、できるだけ適切に選ぶ
顕微授精では、多数の精子の中から1個の精子を選び、卵子の中へ注入します。そのため、「どの精子を選ぶか」も胚培養士の重要な仕事の一つです。
通常は精子の運動性や形態などを確認して選択します。
さらに当院では、症例に応じて、先進医療であるIMSI、PICSI、膜構造を用いた生理学的精子選択術なども実施しています。
IMSIは精子を高倍率で観察して微細な形態を確認する方法、PICSIは精子のヒアルロン酸への結合能を利用する方法、膜構造を用いた精子選択術は、精子自身の運動性を利用して精子を選別する方法です。
それぞれ異なる精子の特徴に着目し、その症例にとってより適切な精子を選ぶことを目指す技術です。
当院では、精液所見やこれまでの治療経過などを踏まえて、精子選別の方法を検討しています。
▶︎ 関連記事:胚盤胞まで育たない方へ。胚本来の力を妨げない「培養の技術」
胚培養士の技術を「個人技」にしない
設備が整っていても、担当する胚培養士によって技術に大きな差があっては、安定した医療とはいえません。
そこで重要になるのが、技術の標準化です。
当院では、顕微授精、胚の取り扱い、凍結・融解などの手順を定め、スタッフ間で技術を共有しています。また、確認、記録、ダブルチェック、機器の点検を日常業務として行っています。
さらに、受精率、卵子の変性率、胚発育などの成績を継続的に確認し、変化があれば原因を検討します。
個人の経験だけに頼らず、データをもとに培養室全体の技術を評価し、改善を続ける。
これも胚培養士の大切な仕事です。
「卵子の質を上げる」のではなく、「持っている力を損なわない」
一方で、採卵された卵子が体外に出てからは、私たち胚培養士がその環境を預かります。
温度を安定させる。pHを乱さない。不必要な操作を減らす。適切な方法で精子を選ぶ。そして、その一つひとつが正しく行われているかを確認する。
この積み重ねによって、卵子がもともと持っている力をできるだけ損なわず、受精、胚発育へとつないでいくことが、培養室にできる重要な役割です。
「受精しない」「胚盤胞まで育たない」という結果が続いていても、その原因を単純に「卵子の質が悪いから」と決めつけることはできません。
卵子の数や成熟度、精液所見、受精方法、受精後の胚発育など、これまでの治療経過を一つずつ確認することで、次の治療で検討できることが見えてくる場合があります。
木場公園クリニックでは、医師と胚培養士がこれまでの治療経過や培養データを確認しながら、次の治療について検討しています。
これまでの採卵や胚培養について気になることがある方は、過去の治療記録も含めてご相談ください。
受付・診療時間
| 時間/曜日 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 |
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午後
午後13:30-16:30 |
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