不妊治療成功のポイント
不妊治療成功のポイント
不妊治療の成功のポイントについて解説するとともに、
木場公園クリニックにおける不妊治療の成功のポイントについてご説明いたします。
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ART実施前の検査
ART(体外受精・顕微授精)の成績に影響を及ぼす大きな6つの柱には、ART実施前の検査、卵巣力を評価した適切な卵巣刺激の選択、採卵、培養室業務、胚の選別と胚移植、黄体補充があります。
この柱のどの部分が悪くても良好な妊娠率を得ることができません。
ART(体外受精・顕微授精)実施前には下記の検査を行っています。
まず、女性の検査です。①採卵前検査セット
・感染症(有効期限2年)
- RPR法(梅毒の検査)
- TPHA法(梅毒の検査)
- HBs抗原(B型肝炎の検査)
- HCV抗体(C型肝炎の検査)
- HTLV-1(将来白血病になるかもしれないといわれているウイルスの検査)
- HIV1,2 抗体(エイズの検査)
- PPT
- APTT
- ABO血液型
- Rh(D)血液型
- 白血球数、赤血球数、血色素量
- へマトクリット値、MCV、MCH、MCHC、血小板数
クラミジアトラコマチス抗体価精密測定IgG、IgA
②甲状腺検査
甲状腺刺激ホルモン(TSH)精密測定
遊離サイロキシン(FT4)精密測定
遊離トリヨードサイロニン(FT3)精密測定
③自己免疫検査
抗精子抗体
④染色体検査
血液中のリンパ球の染色体の検査(血液検査)
⑤抗ミューラー管ホルモン検査(AMH)
卵巣力を調べる検査
⑥オプション検査
・不育症セット
- 抗カルジオリピン抗体精密測定(IgG)
- 抗カルジオリピンIgM型抗体
- 抗カルジオリピンβ2グリコプロテイン(抗CLβ2GPI)
- 複合体抗体
- 抗DNA抗体精密測定
- 抗核抗体精密測定
免疫的に妊娠を排除しやすい体質でないかを調べる検査
膣・子宮頚管、細菌培養、子宮癌検査、ホルモン検査
卵巣刺激を行う前周期には、ホルモンの基礎値をみるために、月経の始まった日を1日目として、1日目から3日目までの間に血清の(エストロゲン)、LH、FSH、PRL(プロラクチン)、TES(テストステロン)の測定を行っています。
・E2(エストロゲン)
卵巣刺激周期には、月経1日目から3日目にE2(エストロゲン)、PRG(プロゲステロン)、LH、FSHの測定を行っています。
卵胞ホルモン、いわゆる女性ホルモンと呼ばれているホルモンで、卵胞の顆粒膜細胞から分泌されています。
・LH(黄体化ホルモン)
この値から卵胞の発育状態がわかります。
排卵前にピークに分泌し、排卵を促すホルモンです。
・FSH(卵胞刺激ホルモン)
卵胞を刺激して、卵胞を育てるホルモンです。閉経の5~6年前、無排卵、不規則な月経周期などでは、この値が上昇します。
・TES(テストステロン)
男性ホルモンで、女性ではテストステロンの2/3は副腎というところから分泌されます。テストステロンの分泌が過剰になると多毛症になったりします。
・PRG(プロゲステロン)
黄体ホルモンといい、排卵後に卵巣内にできる黄体から分泌され、子宮内膜を着床しやすい状態にするホルモンです。またPRGが上昇することにより、基礎体温が低温相から高温相になります。
ART実施前の検査(男性)
①感染症
- RPR法(梅毒の検査)
- TPHA法(梅毒の検査)
- HBs抗原(B型肝炎の検査)
- HCV抗体(C型肝炎の検査)
- HTLV-1(将来白血病になるかもしれないといわれているウイルスの検査)
- HIV1,2 抗体(エイズの検査)
精液量、精液濃度、運動率、高速運動率、正常形態、白血球数、凝集の有無、液化
③クルガーテスト
精子奇形率について染色液を用いて詳しく調べる検査
④精液培養
精液中に雑菌があるかどうかを調べる検査
⑤SCSA
精子の核のクロマチンの状態を調べる検査
⑥抗精子抗体
精子不動化試験
⑦染色体検査
血液中のリンパ球の染色体の検査(血液検査)
⑧オプション検査
・AZF領域検査
Y染色体上の長腕にある精子形成に関連している遺伝子を調べる検査
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卵巣予備能力の評価
ARTを実施する前に卵巣の予備能力を評価することで、ARTによってどれくらい成績を上げられるか(妊娠率など)をより具体的にお伝えすることができます。
また、それぞれの患者様にあった卵巣刺激法を選択するための重要な指標になります。
卵巣の予備能力を予測できるものには、年齢、AMH(抗ミューラー管ホルモン)、FSH、エストラジオール、卵巣容積、胞状卵胞数、喫煙の有無などがあります。
この中で、胞状卵胞数(月経1~3日目に経膣超音波で見える、左右の卵巣内にある小さな卵胞の数の合計)を最も重要と考えています。
年齢
人間の身体能力が年齢をかさねるごとに低下(老化)していくのと同じで、卵巣の予備能力も年齢をかさねるごとに低下していきます。年齢が高くなるほど妊娠率・着床率が低下していきます(図1-1,2参照)。
しかし、実年齢よりふけてみられる人や若くみられる人がいるように、女性の年齢と卵巣年齢がいつも同じわけではありません。40歳代のかたが30歳代の卵巣年齢のこともありますので、そういう場合は良好な妊娠率が得られる可能性があります。逆に20歳代のかたが30歳代の卵巣年齢のこともあります。
木場公園クリニックでは、実年齢と卵巣年齢のギャップも考慮して卵巣刺激法を選択しています。FSH(卵胞刺激ホルモン)
卵胞刺激ホルモンという名前からも分かるように「成熟卵をつくりなさい」という命令を出しているホルモンで、脳にある下垂体から分泌されています。
FSHは黄体化ホルモン(LH)とともに卵胞を発育させ、卵胞内からエストロゲン(卵胞ホルモン)が分泌して、子宮内膜を厚くしたり、排卵前に子宮頚管の分泌液を増やして精子が子宮に入りやすくするなど、結果的に妊娠に大きくかかわっているホルモンです。
しかし、大事な働きのあるホルモンだからといって、分泌量が多ければ多いほどよいわけではありません。卵胞刺激ホルモンの分泌量が増えるということは、強く多く命令を出さないと卵巣の反応が得られなくなっていることを表しています。つまり、卵胞刺激ホルモンの値が上がるということは、卵巣の予備能力が落ちていることになります。
閉経の5-6年前、無排卵、不規則な月経周期の場合、卵胞刺激ホルモンの値は上昇します。また、月経1日目から3日目のFSHの値が上昇するにつれて妊娠率は低くなります(図2参照)。
FSHの値は周期によってばらつきがありますが、FSHの基礎値(木場公園クリニックでは月経1~3日目の値)が高いほうがばらつきの幅が大きくなります。
卵巣の予備能力が落ちているかたは特に、FSHの値によって、時にはART予定をキャンセルして、次のよりよい周期を待つこともあります。E2(卵胞ホルモン・エストロゲン)
「子宮内膜を厚くして、着床の準備をしなさい」という命令を出しているホルモンです。
卵巣刺激前周期の月経3日目の卵胞ホルモンの値が高いと、採卵のキャンセル率が高くなり、妊娠率は低くなります。卵巣容積
男性では、精巣の大きさ=精子を作る力といわれていますが、女性でも卵巣容積と卵巣の予備能力は深く関連しています。
卵巣容積が大きいほど妊娠率が高く、採卵のキャンセル率が低くなります。胞状卵胞数
原始卵胞→一次卵胞→二次卵胞→前胞状卵胞→胞状卵胞→排卵前卵胞と成長し、排卵がおこります。
胞状卵胞(antral follicle)とは、卵胞腔が形成されたもののことです。
胞状卵胞数は写真のように、経膣超音波の画像から数えます。また下のグラフのように胞状卵胞数が多いほど、採卵数は多くなります。
木場公園クリニックでは、まず卵巣刺激を行なう前周期の月経1日目から3日目に胞状卵胞数を調べます。
卵巣刺激開始直前に再度、胞状卵胞数を調べて卵巣刺激法の種類と排卵誘発剤の量を決定しています。
喫煙
喫煙は男女ともに生殖能力を落とすといわれ、以下のようなデータ報告があります。
- 36歳未満の女性を喫煙の有無で比較すると、喫煙者のほうがFSHの基礎値が高い。
- ART実施期間に使用したhMG(排卵誘発剤)の本数は非喫煙者が38.9±13.6本だったのに対し、喫煙者は48.0±15.6本。
- 採卵数は、非喫煙者が11.6±6.3個、喫煙者は6.2±3.4個。
喫煙は健康上でも不妊治療を行なう上でも何ひとつよいことはなく、むしろ生殖機能を悪くしますので、ご夫婦ともに禁煙されることを強くすすめています。
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採卵
採卵とは、排卵誘発剤で卵子を育て成熟させて、排卵する直前に体外に取り出す方法です。
卵子は排卵してしまうと、体外から取り出すことはできません。
卵巣刺激でよい卵が数多く育っても、雑に取り出すと、デリケートな卵は変形したり、卵胞内に取り残す可能性もあります。
採卵では、卵子を良好な状態で回収することがポイントになります。
採卵は、手術室(採卵・胚移植室)で行います。
ご本人確認、アレルギーの有無などを確認した後に、心電図、血圧、パルスオキシメーター(動脈血酸素飽和度測定)を患者様に装着します。 採卵は、局所麻酔または静脈麻酔で行います。
外陰部と膣内を温めた生理食塩水で洗浄します。
経腟超音波プローブに卵胞穿刺用のガイドを装着して、膣から卵巣内の卵胞に採卵針を刺して、卵子が入っている卵胞液を吸引します。
経腟超音波プローブは採卵前に、7分かけて高水準消毒を行います。
採取後の卵子は付着物を落として、37℃で管理されたインキュベーター(一定の温度に保つための装置で酸素濃度、二酸化炭素濃度、窒素濃度が厳密に管理されている)で受精まで前培養します。
麻酔をしますし、腹腔内に出血するなどのリスクもありますので、手術の扱いになります。
安静時間は、約30分から2時間です。- 採卵日の決定
採卵は、卵をいかに良好な状態で数多く回収できるかが重要です。経膣超音波とホルモン値測定で、卵の成熟具合をチェックし、採卵日を決定します。
- IVFコーディネーターとの話
採卵日が決まるとIVFコーディネーターから、採卵日の来院時間、採卵時の麻酔方法についてなどの説明をしています。
- リコンビナントhCGの注射とブセレリンの使用
リコンビナントhCGの投与によって、人為的にLHサージを起こし、排卵を促します。
リコンビナントhCGの注射後、約38時間後に排卵するといわれていますので、「卵子が排卵する直前の成熟した状態であり、かつ、排卵してしまう前に採卵できる」ように木場公園クリニックでは採卵予定時間から逆算して、採卵日の2日前の21時30分に注射をしています。
注射をした翌々日の朝8~9時に採卵をすることになります。
ロング法とショート法では、トリガーにリコンビナントhCG のみを使用します。
ロング法とショート法以外の卵巣刺激法では、トリガーにリコンビナントhCG とGnRHアゴニストのブセレリンの二種類を使用します。 - 採卵がキャンセルになる場合
採卵に向けて誘発剤の注射を頑張っていたのに、急に採卵のキャンセルが決まった・・・ということが、ごくまれにあります。卵巣刺激期間中にP(プロゲステロン=黄体ホルモン)の上昇があった時、(エストロゲン=卵胞ホルモン)が著明に低下した時、卵巣の反応が明らかに悪い時です。
このような状態で採卵をしてもよい結果は得られないことがわかっていますので、次によい周期をつかまえられるよう無理やり採卵はしません。
木場公園クリニックでは、hMG注射を始めて4日目以降は採卵当日まで原則的に毎日採血をしてホルモン値を測定しています。毎日採血して、その結果を表にしていくことで、- ホルモン値から、hMGの種類や量の変更をすぐに行なうことができる
- 卵胞の成熟状態を細かくみて採卵に最良の日を知ることができる
- 採卵をキャンセルすべきかどうかを判断する
- 今回のARTで妊娠しなかった場合、次回誘発時に今回の誘発方法をよく検討してよりよい卵巣刺激法にする
- 採卵前日に自宅で行なうこと
禁飲食
21時以降は食べたり飲んだりしないようにお願いしています。
飲食ができるのは採卵後の状態をみてからになります。
下剤
21時30分に下剤の坐薬(レシカルボン)を2個肛門に入れていただきます。挿入の刺激ですぐ便意をもよおすこともありますが、坐薬だけ出てきてしまいますので、できるだけ10~15分くらい我慢してから排便するよう説明をしています。
- 採卵日の決定
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当院の研究施設
体外受精や顕微授精を実施する上で最も重要なことは、安全第一のシステムです。
また、1%でも妊娠率を高めるための「継続した努力」です。
当院の最先端不妊治療技術・設備について紹介いたします。Loboratory work
Loboratory workとは、実際に卵や精子を処理したり、体外受精や顕微授精を行うラボ(研究室)での仕事のことです。
木場公園クリニックでは胚のためのICUシステムを導入しています。無停電システム
発電機は、防火用ではなく電算用にも使用出来る波形制度。UPSとの組み合わせで完全無停電。
無停電になるのは、インキュベーター、ラボ内エアコン、保冷庫、落雷防止器。
休診日、夜間等の不在時でも音声警報で知らせる インキュベーター各種アラーム時、室温異常、発電機作動時、院長他3名の携帯電話に自動通報メールインキュベーター監視システム
インキュベーターの温度・CO2濃度・O2濃度、培養液を保管する保冷庫の温度、ラボ内の室温・湿度を24時間監視し、その記録が全て残ります。
異常値が出た場合にはスタッフの携帯電話にメールが届き、休診日・夜間などのラボ内不在時にも24時間体制で対応することができます。
また、セキュリティーや清潔度を保つために、暗証番号を押して手をよく洗い、エアーシャワーを通らないとラボの中に入れないシステムを採用しています。
ラボは半導体がつくれるレベルに保たれ、また温度、湿度を厳密に管理されています。
卵や精子を扱うもののことをエンブリオロジストと呼びますが、エンブリオロジストは国内外の学会に出席したり、クリニック内での勉強会・抄読会に参加して、毎日勉強を続けています。タイムラプスシステム
従来は胚の観察はインキュベーターの中に胚が入っているDishをインキュベーターから外に取り出して顕微鏡で観察をしていました。
1日に何度も胚を観察すると培養している環境が変わるため、観察の回数は極力少なくしていました。
タイムラプスシステムは培養器に顕微鏡が埋め込まれていて、胚が入っているDishを器械から取り出さなくても約10分毎に胚を自動的に観察して、情報がハードの中に蓄積されます。
タイムラプスシステムを使用することにより、連続して胚を観察することが可能となり、異常な分裂のパターンがないか、時間軸にズレがないかなど、従来の胚の観察と比較して得られる情報量がすごく多くなりました。
どの胚を胚移植するかの判断に非常に有効です。
また、タイムラプスシステムを使用することによって、胚を培養する環境が一定となり、良好な胚盤胞到達率が48.8%から60.0%に上昇しました。 現在東京の木場公園クリニックではEmbryoScope+を4台で患者様の大事な胚を培養させていただいています。
EmbryoScopeは、ヨーロッパとアメリカで臨床使用のために初めて認証された世界で最も使用されているタイムラプスシステムです。新しくなったEmbryoScope+は、EmbryoScopeに比べて2倍以上の容量があり、1台につき最大で15症例、各16胚の胚培養が可能です。
タイムラプスインキュベーターに胚の登録を自動で行える特殊なバーコードラベルシステムは、患者様の識別が容易で、胚の取り違え防止にも役立ちます。 -
質の良い胚を選別
ヒトの胚は、見た目がきれいな胚でも約40%に染色体異常があると言われています。外観が悪い胚では染色体異常の割合が増加します。つまり、染色体異常の確率が少ない胚を選んでなければ、医師が一生懸命胚移植をしてもいい結果には結びつきません。
良好な胚を選択するために、採卵日の卵、前核期胚(1日目の胚)、3日目の分割した胚、5日目の胚盤胞とそれぞれ指標を決めて評価を行ないます。採卵日翌朝の胚では、雌性前核と雄性前核の核小体の状態、極体と前核との位置、Halloがあるかないか、また、採卵日翌日の夕方には胚を再び観察して2分割しているかどうかをチェックします。早期に2分割している胚は形態良好胚(いい胚)になる確率が高いと報告されています。
3日目の胚の選別には、割球数、フラグメント率、多核のある割球の有無、割球の大きさの差を用います。割球数は、3日目の朝胚を観察したのか、夕方に観察したのかによっても評価が異なってきます。3日目の朝胚を観察した場合には、8細胞に分割している胚がベストです。
フラグメントとは、胚の中にある割球以外のブツブツした余分なもののことです。フラグメントの占める割合が少ない胚ほど、胚が染色体異常である確率が低くなります。胚が染色体異常である確率は、フラグメント率が0%では約55%であるのに対して、フラグメント率が30%以上では約90%となります。
割球の大きさについては、割球の大きさに差がない胚ほど染色体異常が少なく着床率が高くなります。
多核(細胞の中に核が2個見える)のある割球がある場合には、胚が染色体異常である確率が高くなります。
通常3日目に胚移植を行うことが多いと思いますが、1日目と3日目の胚の各種の指標を参考にして、どの胚を胚移植するかを決定します。
実際に、木場公園クリニックでは、人でも○○小学校出身、○○大学△△学部出身というように、3日目までは胚1個毎の履歴がシートに詳細に記録されています。その履歴をもとに、医師とエンブリオロジストとでミーティングを行なって、どの胚を胚移植するかを決定します。
数回胚移植を行なっても着床しない場合、子宮外妊娠の既往があるなど卵管因子のある場合、非閉塞性無精子症などの男性因子がある場合、採卵数が多く3日目で胚の選別が困難な場合、患者様から胚盤胞培養の希望の強い場合には、5日目(または6日目)まで胚を培養します。胚盤胞の選別は、木場公園クリニックではDavid Gardnerの分類(表)に従って選別を行ないます。
胚盤胞には内細胞塊(胎児になる部分)と栄養芽層(胎盤になる部分)があります。Gardner([胚盤胞(Gardner)の分類]参照)は胚盤胞のステージ(時期)と内細胞塊と栄養芽層の細胞数で胚盤胞を分類しています。分化が早く細胞数の多い胚盤胞ほど良好な胚盤胞です。 -
黄体補充
採卵・胚移植が無事に終了したら、後は妊娠判定を待つだけ…ではありません。 黄体補充を行ないます。
通常、排卵後の女性の体では排卵した後の卵子が入っていた袋(卵胞)が黄体化することをサインに、「子宮内膜の状態を整える」働きのあるプロゲステロン(黄体ホルモン:P)と、「子宮内膜を厚くして、着床の準備をする」働きのあるエストロゲン(卵胞ホルモン:)が多く分泌され、子宮内膜をフカフカのベッドのようにして妊娠のための準備をしていきます。しかし、卵巣刺激・採卵を行なった場合は、卵子の成長をhMG・hCGで行ない、脳下垂体の抑制をスプレキュアやアンタゴニストで行なうなどのコントロールをしているので、自然に排卵した場合と比較して黄体機能(黄体からのプロゲステロンとエストロゲンの分泌)が低下します。ですから、より妊娠しやすい状態をつくり、妊娠した場合は維持できるよう黄体から分泌しているホルモンの補充をしていく必要があります。
黄体補充というと、プロゲステロンの補充しか行なわない施設もありますが、上記のようにプロゲステロンとエストロゲンの2種類のホルモンの働きで妊娠を助けるので、当クリニックではプロゲステロンとエストロゲン両方の補充を行なっています。ロング法でも、アンタゴニスト法でも両方の補充を行なっていますが、特にロング法のときは必ずエストロゲンの補充もする必要があるといわれています。木場公園クリニックでの黄体補充方法
hCGはほとんど使っていません。
- プロゲステロン(黄体ホルモン)の補充
採卵後2日目にプロゲストン50mgを筋肉注射します。
採卵後3日目からの補充方法は、原則的に患者様に選んでいただきます。筋肉注射を1日1回行なう方法と、膣坐薬を1日2回自分で挿入する方法があります。
プロゲステロン膣坐薬の場合は、膣坐薬を(1回分225mg)1日2回使用し妊娠8週まで連日補充をします。 プロゲストン50mgの筋肉注射の場合は、妊娠5週2日まで連日補充をします。その後は、妊娠5週3日、5週6日、6週3日、6週6日、7週3日にプロゲデポー125mgを筋肉注射で補充します。
プロゲデポーはプロゲストンに比べ作用時間が長いため、プロゲデポーに変更後は連日注射する必要がありません。 - エストロゲン(卵胞ホルモン)の補充
採卵後7日目から行なっています。エストラーナ(1枚0.72mg)という貼り薬を2枚貼って皮膚から吸収させます。交換は1日おきです。エストロゲンの補充は症例によっては、少し早めに始めたほうがよい場合もあります。
- ホルモン値の測定
ただ黄体補充をしていればそれでよいという考えではなく、「補充がうまくできているか」を知るために定期的に採血をしています。hCG投与後は、hCG投与翌日、採卵直前、採卵後3日目、採卵後10日目、採卵後17日目(妊娠判定日)に行なっています。
また、妊娠判定がマイナスだった場合には、黄体補充に問題があったのか、なかったのかを評価でき次のARTに生かすことができます。
- プロゲステロン(黄体ホルモン)の補充
木場公園クリニックの特徴
木場公園クリニックは体外受精・顕微授精に特化したクリニックです。
少しでも安心して不妊治療を受けていただけるよう、
様々なトータルソリューションをご提案・ご提供いたします。