不妊症の原因や定義
不妊症の定義
男性不妊、女性不妊に関わらず、1年間夫婦生活を営んでいても、妊娠しない夫婦を不妊症といいます。
WHO(世界保健機関)による、不妊症の7273カップルの調査によると、不妊症の原因は41%が女性のみ、24%が男女ともにあり、24%が男性のみ、11%が原因不明です。
つまり男性に不妊症の原因のあるカップルが約4組に1組、男女ともに不妊症の原因のあるカップルも約4組に1組もありますので、不妊症の検査は夫婦ともに受けることが原則といえます。
木場公園クリニックでは、約4割のカップルに男女ともに不妊症の原因があります。
不妊症について学ぶには、正常な妊娠の成立を知ることが大切です。
不妊症の原因
不妊症といっても、原因はさまざまです。
大きく分けると原因は女性側、男性側の片方、あるいはその両方の原因とに分けられます。
主な不妊症の原因となるのは次の5つになります。
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排卵因子による不妊症
排卵因子は、卵子の成熟、排卵、黄体形成などに異常があると排卵が障害されることで不妊症となります。
排卵に障害の引き起こす因子としては、中枢性の排卵障害(ストレス、肥満、急激な体重減少など)、高プロラクチン血症、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)、黄体機能不全、卵巣機能低下などがあります。性成熟期にある女性においては、視床下部ー下垂体ー卵巣の相互作用により排卵は調整されています。妊娠が成立しなければ月経が発来するが、その月経の正常範囲は、周期は25~38日で、その変動は±6日以内です。
卵胞期の日数はおよそ18±6日、排卵日は月経開始日から数えて12~24日目で、黄体期は13±2日です。出血の持続日数は3~7日、経血量は20~140ml程度です。これらの基準値を逸脱する場合、内分泌療法の対象となります。不妊外来においては、基礎体温の測定は必須です。
ホルモン検査としては、月経中あるいは消退出血の際に血中LH(黄体形成ホルモン)FSH(卵胞刺激ホルモン)、プロラクチン(PRL)値を測定します。過去の基礎体温の記録、あるいは患者の月経周期からおよその排卵日を推定して受診し、経膣超音波検査で約18㎜程度の卵胞発育を確認し、血中エストラジオール(E2)値を測定します。その後、高温相の5~9日目に血中プロゲステロン(P4)値を測定します。保険診療の関係で同一周期内に血中E2値の測定回数は1回に限定されていますが黄体期のE2値測定も意義があると考えれられています。排卵障害の女性のでは、LH、FSH、PRL、あるいはE2値の測定結果は、視床下部、下垂体、卵巣性の排卵障害、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)、および高プロラクチン血症の診断に有用です。その他、環境の変化などに伴う大きな精神的ストレス、あるいは短期間の急激なダイエットの場合にも月経不順をきたすことがあります。
排卵因子の不妊症の原因には、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)、高プロラクチン血症、早発卵巣不全などがあります。 -
卵管因子による不妊症
卵管は子宮体部の底部から左右に伸びる7~8cmの管状の器官で内腔は子宮と交通し、他方は腹腔内に開口しています。卵管の先には、卵管采があり、排卵によって飛び出した卵子をキャッチし、絨毛運動と卵管の蠕動運動によって卵子や受精卵を子宮へ送ります。
また、精子は子宮腔を通って卵管に至り、排卵直後の卵子と膨大部付近で出合い受精します。卵管が癒着したり、閉鎖していたり、炎症を起こしたりなどの異常があると、卵子が卵管内に入れなかったり、精子が卵子までたどりつかなかったりします。なんとか受精できたとしても、その受精卵は卵管を通って子宮へと移動するため、卵管に異常があると、受精卵が子宮内腔へと移動することができません。
卵管閉塞、狭窄(クラミジア感染症など)、卵管周囲癒着(骨盤腹膜炎、下腹部手術の既往など)、卵管留水症なで卵管に異常があると不妊症となります。
卵管通過性の検査法としては、古典的にはルビンテストが行われてきました。これは子宮口から持続的に炭酸ガスを注入し、あらかじめ患者の左右の下腹部に固定した聴診器で卵管采からの炭酸ガスの排出音を聴取し、同時に子宮内圧をグラフで表現する方法です。その後は超音波下卵管通過性検査が主流となり、子宮内腔の情報と卵管通過性を確認します。また、一定時間後に腹部単純写真を撮影し、腹腔内における造影剤の動態から卵管采周囲癒着の診断もおこなわれます。
超音波造影検査による卵管通過性の診断法もあります。 -
子宮因子による不妊症
子宮は、精子を遡上させ、受精卵を着床させる機能があります。
子宮の構造自体に問題がある子宮奇形には、たとえば重複子宮や中隔子宮、双角子宮などがあります。
また、着床を阻害するといわれている子宮内膜症、子宮筋腫、子宮奇形、子宮内膜ポリープなどが不妊の原因とされます。
このように子宮に何らかの異常や問題がある場合、受精卵が最終的に着床できず、着床障害と診断されます。子宮内腔癒着症
子宮内膜の炎症後に、子宮の内腔がひっついたもので、子宮内容清掃術(人工妊娠中絶術や自然流産後の手術)や分娩の後に発生し、癒着の程度がひどくなると月経量が少なくなります。子宮筋腫
平滑筋でできている子宮の筋肉から発生する良性腫瘍で、石のように固い腫瘍です。約5%は子宮頚部に発生し、約95%は子宮体部に発生します。
発生部位によって、筋層(壁)内筋腫、しょう膜下筋腫、粘膜下筋腫に分類されます。
粘膜下筋腫ができると、月経の量が多くなります。
不妊症ともっとも関連があるのは、粘膜下筋腫です。
子宮奇形
子宮は、左右のミュラー管がひっついて発生する臓器です。その癒合の異常によって、先天性子宮奇形が発生します。
先天性子宮奇形には、弓状子宮、不全中隔子宮、中隔子宮、双角単頚子宮、双角双頚子宮、分離重複子宮、単角子宮があります。
子宮内膜ポリープ
子宮内膜が有茎上に発育したもので、子宮卵管造影、超音波検査や子宮鏡などによって発見されます。 -
男性不妊の原因・種類など
男性不妊には先天性と後天性のものがあります。
先天性の男性不妊の原因は、様々な遺伝的要因や、発育段階で受けた影響等で、性機能不全になるものです。
性機能不全とは、性的欲求や性的興奮とその最高潮などが、減退・欠如する状態をいいます。
勃起障害(ED、勃起の状態や持続時間が不十分で性行為が行えない又は不十分な状態)、早漏(射精が早期に生じ、性行為に満足を得られない)、オルガスムス障害・遅漏(オルガスムスに達ない、又は時間がかかりすぎ、射精困難で満足が得られない)等があります。
後天性の男性不妊の原因は、ストレス、アルコール、喫煙、肥満・糖尿病、病気や薬の影響、精巣の損傷もしくは機能障害、精子の産出あるいは射精に関するトラブルなど様々なものが考えられます。男性不妊の原因の約90%が造精機能障害です。
精子をつくり出す機能自体に問題があり、精子をうまくつくれない状態です。
精巣や内分泌系(ホルモン分泌等)の異常が障害をひき起こします。
造精機能障害には下記のような種類があります。
無精子症
造精機能障害の中でも重い症状です。精液中に精子が一匹もいない状態ですが、精巣や精巣上体に精子が存在していれば、顕微授精などの不妊治療で受精・妊娠することが出来ます。乏精子症
精液の中に精子はいるけれど、その数が少ないという症状です。精子の数が基準を少し下回る程度であれば、タイミング法などを行います。さらに精子の数が少ない場合、人工授精、体外受精、顕微授精等の不妊治療を行います。精子無力症
精子の数は正常にあるけれど、製造された精子の運動率が悪い症状です。その精子の状態により人工授精や顕微授精などの不妊治療を行ないます。 -
原因不明の不妊症
不妊検査の結果、異常がなかったのにもかかわらず、妊娠しないことを「機能性不妊」といいます。 これは約10%のカップルに見られ、異常がなくてよかったと思う半面、具体的な治療法が見えずに悩む人も多いでしょう。
しかし「原因不明」と判断する前に、まず必要な検査をすべて行っているか、再度チェックしたほうが良いでしょう。逆にいうと、妊娠するためには射精から受精、着床に至るまですべての条件がととのっていなければなりません。ある病院ではわからなかったことが、別の病院で違う検査を受けたらわかったというケースもあります。
一般に、不妊のおおまかな原因を探るには基本検査が必要とされます。 これらをすべて受け、特に問題がなかったときには「原因不明」と診断され、さらにくわしい検査をして治療を進めるのが一般的です。「原因がない」のではなく、「説明ができない」のが機能性不妊
確かに、検査では特に異常がなく、「性交と排卵のタイミングが合わない」カップルもいます(この場合は「タイミングが合わない」ことが原因になりますが)。
検査でどうしてもわからない異常に、「卵子のピックアップ障害」があります。
卵巣から飛び出した卵子が、なんらかの原因によってラッパ状の卵管采に入っていけないことをいい、むずかしい不妊症の約半数を占めます。
また、卵子と精子が互いに出会っているはずなのにもかかわらず、精子が卵子の中にうまく入っていけない「受精障害」もあります。 さらに、医療技術が進歩しても、現在ではどうしてもわからないブラックボックスとされているのが「着床障害」。「着床」とは受精卵(胚)が子宮内に異常があるとうまくいかない場合があるのです。
このように、原因はあっても、今の医療ではわからない場合があります。
木場公園クリニックの特徴
木場公園クリニックは体外受精・顕微授精に特化したクリニックです。
少しでも安心して不妊治療を受けていただけるよう、
様々なトータルソリューションをご提案・ご提供いたします。