体外受精の失敗を乗り越える心と次の一歩 | 木場公園クリニック-JISART認定 体外受精・顕微授精
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体外受精の失敗を乗り越える心と次の一歩

以前にくらべ、身近な治療になっている体外受精(IVF‐ET)の初回で妊娠できるのは、年齢にもよりますが、約40%程度です。
つまり半数強のカップルは、期待をもって臨んだ初めての体外受精で、失望や挫折感を味わうことになります。

もちろん残念なことですが、これでめげては、妊娠は遠のくばかり。
次回以降のチャレンジで成功するためにも、正しい知識と心構えを持つことがたいせつです。
  1. 目次

  2. 体外受精が失敗してしまう主な要因

  3. 体外受精失敗後の心理的影響とケア

  4. 再挑戦に向けた生活習慣の見直し

  5. 失敗に至った要因をとり除く医療のサポート

  6. 木場公園クリニックの取り組み

体外受精が失敗してしまう主な要因

体外受精は、タイミング法や人工授精などの一般不妊治療を受けても妊娠しない場合に選択される生殖補助医療(ART)です。

経腟超音波下で卵子を卵巣から採卵し、男性から採取した精子と受精させ、できた受精卵を培養して子宮に移植するという高度な医療技術が用いられますが、その流れの中で、何らかの問題が生じると、妊娠は成立しません。

受精がうまくいかなかった

精子が卵子の中に入り、それぞれの細胞の前核がひとつに融合するのが「受精」です。
体外受精では、培養液に入っている卵子に、精液を特別な方法で調整して回収した運動性の良好な精子をふりかけます(媒精)。

卵子と精子をセッティングした後は、精子が自身の力で卵子の透明帯を突破して、中に入っていかなくてはなりません。精子にその力がなかったり、卵子の透明帯が厚すぎる場合は、受精できません。

また精子が卵子の中に入ると、精子の頭部から卵子を活性化させる物質が放出されます。
精子がその物質を放出できない、あるいは卵子の側に問題があって活性化がうまくいかない時にも受精は起こりません。

受精卵はできても、胚移植ができなかった 

通常は、卵子または精子に染色体異常があっても、受精は成立します。
しかし、その後の分割がうまく進まないことがあります。

たとえば、受精は成立しても、全く分割しないこともあれば、3日目の初期胚移植を予定していたが、4分割まで進まなかったため胚移植がキャンセルとなるケースや、胚盤胞移植を目ざして培養しても、良好な胚盤胞にならなかったため胚移植がキャンセルとなるケースなどです。

こうした受精卵の分割障害の原因は明らかではありません。
多くは、卵子、精子のどちらか、あるいは両方に染色体異常があり、育つことができなかったものと考えられます。
また、凍結の技術が進歩したため、採卵した周期に移植を行わず、いったん胚を凍結し、次周期以降に子宮内膜を着床しやすい環境に整えてから移植する凍結融解胚移植という方法が主流になっています。

現在の急速ガラス化法では、融解後の胚の生存率は95%以上ですが、まれに凍結融解のストレスに耐えられずに胚が変性したり、破損してしまい、胚移植がキャンセルになるケースもあります。

胚移植をしたが、着床しなかった

胚移植は、専用のやわらかいカテーテルに培養液ごと胚を吸引し、超音波下で子宮に挿入して、胚を子宮内膜の上に置きます。胚は子宮内膜に接着し、もぐりこんでいきます。

これが着床で、胚が母体とつながり、母体の血液から酸素や栄養分をもらって、胎児へと成長していくことになります。

形態が良好なグレードの高い胚を移植しても着床しない「着床障害」は、胚自体に染色体異常がある、あるいは子宮内の環境が着床にふさわしくない、などの原因がありますが、着床のメカニズムは非常に複雑で、解明できていないことが多いのが現状です。

医療の進歩により、受精や培養の段階では、かなり多くのことが可能となってきました。
しかし着床については、現在も不妊治療の大きな課題となっています。

体外受精失敗後の心理的影響とケア

「何がいけなかったのだろう」「あのとき、こうしていたらよかったのかも」と、あれこれ考え込んだり、悔んだりするのは、ある程度は仕方のないことですが、いつまでも失敗にこだわりすぎると、それが次へのチャレンジを妨げることにもなりかねません。

失敗に直面したときの感情への対処

妊娠判定が陰性であることをお伝えすると、気が動転して涙が止まらなくなってしまうかたもいます。
そんな時は、すぐに診察室から出なくていいとお話をしています。

まずは結果を受け止めることですが、落ち込みから回復するにはやはり時間が必要です。

前向きに受けとめる

当院では、妊娠判定が陰性であったことを伝えた後には、必ず今回の治療の復習をします。

卵巣刺激法でどのように卵胞が成長したか、ホルモン値の推移や胚移植時の子宮内膜の厚さ、胚移植に使用した胚のグレードなどを説明し、そのうえで、次回に向けて考えられる修正点があれば、それも説明します。

もし今回の治療で疑問に思ったことや納得いかないことがあるなら、遠慮せずに医師に尋ねましょう。

パートナーとの協力体制

不妊治療は女性だけが行うものではありません。

ご夫婦2人が同じ目標に向かって情報を共有していくことが重要です。
2人で治療しているという意識の強いカップルは、妊娠判定の結果を2人で聞くことが多いものです。

当院では、妊娠判定日にどうしてもご主人の都合がつかない場合は、希望があれば後日でも再度説明を行うようにしています。

専門家によるサポートとカウンセリング

女性は胚移植後の過ごし方に何か問題があったのでは、などと自分を責めてしまいがちです。
しかし通常の日常生活が着床に影響することはまずないことを知っておきましょう。

どうしても前向きになれない時は、ひとりで思い悩むのではなく、クリニックのスタッフに相談しましょう。
多くの不妊専門施設では、不妊カウンセラーや、その資格を持つ看護師がいます。

必要があれば臨床心理士のカウンセリングを受けていただくこともあります。
診察を予約する 03-5245-4122 03-5245-4122

再挑戦に向けた生活習慣の見直し

卵子も精子も、ご夫婦の体の中にある栄養を使用してつくられます。

受精や着床ができる良質な卵子や精子を得るためには、良い体づくりが必須です。
食事や睡眠、運動など基本的な生活習慣を見直して、健康的な毎日を送りましょう。

これは女性だけに限らず、男性も同様です。

バランスよく必要な栄養を摂取

食生活は妊娠力と大いに関係があります。
偏食をせず、いろいろな食材をとりいれて、できるだけ3食規則正しく食べることがたいせつです。

当院では、患者さんの食事内容、体質、環境などを把握するために、ホームページ上にあるWEB栄養解析問診表を記入していただき、採血による約70項目の血液データと合わせて栄養解析を行っています。
その結果、不足している栄養素があれば、個別にサプリメントで補充します。
当院で使用しているサプリメントは、医薬品と同じレベルの品質管理による過程で製造されている国産の医療機関専用品です。

軽度の運動を心がける

ウォーキングやヨガなど、体力に合った適度な運動は、血流をアップさせ、代謝もよくなります。

休日にご夫婦2人で散歩するなど、いっしょに取り組めばストレス解消にもなります。
ただし、過度な運動は活性酸素をふやし、体の老化につながると言われているので、注意が必要です。

良質な睡眠をとる

日本人の睡眠時間は先進国の中で最も少ないというデータがあります。

睡眠中には成長ホルモンや生殖にかかわるホルモンが分泌されるため、睡眠不足は妊活の大敵です。
就寝前のスマホやPC操作は、ブルーライトの影響で睡眠の質を低下させるので控えましょう。

夫婦で必ず禁煙を

喫煙は健康に百害あって一利なしです。
女性では卵巣機能を低下させ、男性では精子をつくる機能を阻害します。

赤ちゃんを望んで治療を受けるなら、ご夫婦で禁煙を徹底してください。
なお、アルコールは喫煙ほど不妊に大きな影響はないとされていますが、適量を超えないように、できるだけ少なめに。

失敗に至った要因をとり除く医療のサポート

初回の失敗の要因がどこにあったのかをできるだけ明らかにし、そのうえで次の治療をどのように進めるか、治療計画を練り直します。

より受精・着床しやすい良質な卵子を育てる

女性の場合は、良質な卵子を得るためには、そのかたの卵巣機能に応じた卵巣刺激法を選択することが非常に重要です。

顕微授精で受精率が0%であった症例の受精率が約90%になることもあるくらい、卵巣刺激法の変更がよい形に出る例は多くあります。

そのため、体外受精を受ける時には、いろいろな卵巣刺激法の選択肢を持っている施設で治療を行うほうがよいと言えるでしょう。

なお、低刺激または中刺激から、高刺激に変更した時には、卵巣過剰刺激症候群になる可能性があるので、おなかの張りや痛み、体重増加、吐き気や嘔吐などの症状が出た時には、すぐに医師に相談してください。

受精する力のある精子を集める

体外受精の採精前は、3日の禁欲をお願いしています。
それ以上長く射精しないで精液がたまっていると、精子の頭の中のDNAの質や運動率が低下します。

コロナ禍の時期には、院内採精をストップした施設もありましたが、現在では多くの施設で院内採精を再開しています。当院での2023年のデータでは、8割が院内採精でした。

ただし、都合がつかない場合の自宅採精でも、運搬方法等に気をつければ、精子への影響は、さほど気にしなくても大丈夫です。

当院では、調整中の精子や精液調整後の精子を酸化ストレスから守るために、抗酸化剤入りの次世代培養液を使用して精子処理を行っています。

培養環境の改善

従来、胚の分割の様子は、胚を培養器から取り出して顕微鏡下で観察する必要がありました。

現在は、内蔵したカメラで胚を撮影し、動画のように見ることができるタイムラプスというシステムを備えた培養器が開発され、胚を取り出さずに観察できます。

当院ではすべての培養をこのタイムラプス培養器で行っています。
培養環境が一定のため、胚がダメージを受けることはなく、良好な胚を得られる確率が増加することに加え、24時間連続して胚の分割具合をチェックできるので、胚に関する情報が圧倒的に多くなります。
そのため順調に分割している胚を選んで移植することが可能になっています。

また、より妊娠率の高い胚盤胞まで培養する際に使用する培養液は、8細胞期胚を境に、胚が必要とする栄養素が異なることが知られています。

ある程度の濃度で必要な栄養素を含む1種類の培養液を交換せずに使用する方法(シングルステップメディウム)と、前期と後期で組成の異なる培養液に変更する方法(シーケンシャルメディウム)がありますが、当院では、それぞれの成績を比較して、現時点ではより良好な結果が出ているシーケンシャルメディウムを採用しています。

子宮内環境を調べ、整える

着床を妨げる要因は、母体側にもあると考えられています。
近年、遺伝子解析の技術が進み、胚を受け入れる子宮内の環境を調べる各種検査が登場しています。
  • 子宮内膜の着床時期がずれている

    子宮内膜には胚を受け入れるのに適した時期があり、その時期を「着床の窓」といいます。
    胚移植がこの時期とずれていると、うまく着床ができません。
    ERA(エラ)検査は、着床に関わる遺伝子を解析して、そのかたの胚移植に最適な時期を特定します。

  • 子宮内の乳酸桿菌不足

    これまで無菌と考えられていた子宮内にも、さまざまな細菌が存在し、細菌叢(フローラ)を形成しています。

    乳酸桿菌(ラクトバチルス)の割合が90%以下に減少すると、不妊治療の成績が低下するとの研究があり、子宮内にある細菌の割合を調べるのがEMMA(エマ)検査です。
    ラクトバチルスが少ない場合は、腟座薬を使って、補充します。

  • 慢性子宮内膜炎

    慢性子宮内膜炎は、細菌感染によって子宮内膜に炎症が起きている状態で、子宮内膜がつくられるたびに炎症をくりかえします。

    基本的に無症状のことが多いのですが、最近着床障害の要因として注目されています。
    ALICE(アリス)検査は、この病気の原因となる菌がいるかどうかを調べます。
    原因菌が見つかった場合は、抗菌剤による治療を行います。

    ERA検査、EMMA検査、ALICE検査は、いずれも子宮内膜組織を採取して行う検査で、現在は保険診療と併用できる自費負担の先進医療です。

3個を合わせてTRIO検査と呼ばれており、同時に実施することができます。ただし、通常の胚移植のタイミングで検査するため、その周期での胚移植はできません。

木場公園クリニックの取り組み

体外受精の成功率を高めるためには、実施前には十分な検査を行い、卵巣機能を適切に評価した上でふさわしい卵巣刺激法を選ぶこと、安全に配慮して採卵から受精、培養を行い、良好な胚を育てて移植すること、また、移植方法と患者さんのホルモン状態に合わせて適切な黄体補充を行うことが重要なポイントです。

保険診療開始後の当院の卵巣刺激法ですが、卵巣の機能が保たれているかたは、卵巣過剰刺激症候群のリスクを考慮して、原則的にはフェマーラを使用した中刺激法を第一選択にしています。

高刺激法を選択する時は、PPOS法またはゴナールFクロミッド法を行い、ロング法、ショート法、アンタゴニスト法はほとんど行っていません。

初回でフェマーラの中刺激法を選択した時は、分割期胚による新鮮胚移植を行い、余剰胚は長期培養をして、良好な胚盤胞になれば凍結します。

3日目に良好胚が3個以上あって、患者さんが希望されれば、新鮮胚盤胞移植も行っています。
保険診療では移植回数の上限が定められているので、胚移植が反復して不成功であれば、先進医療も含めて、実施できる検査を行った上で治療を行います。

次の体外受精までの間隔は

フェマーラの中刺激法で新鮮胚移植を行い、凍結胚がなく、卵巣の腫れがない時は、次の周期に連続して採卵することがあります。

卵巣が腫れている、または高刺激法では、1周期あけます。

凍結胚の移植は、前回の妊娠判定が完全に陰性であれば、周期をあける必要はありません。
ただし、患者さんが治療に疲れていると感じる時は、時間をおくこともあります。

体外受精以外の選択肢について

  • 顕微授精への切りかえ

    自然の受精を待つ体外受精と違い、顕微授精は一個の精子を卵子の中に確実に送り込むので、受精率は高まります。

    初回の体外受精で、受精卵がひとつもできなければ、即顕微授精に変更します。
    体外受精で受精率が低い場合も、次回は体外受精と顕微授精を半々にする方法をとることがあります。

  • 胚の染色体異常を調べるPGT-A

    染色体異常のある胚は、多くの場合、自然に淘汰され、着床できなかったり、たとえ着床しても流産してしまいます。

    胚染色体の数を調べ、過不足のない正常な胚を選んで移植するのがPGT-A(着床前胚染色体異数性検査)です。

    高齢で2回以上胚移植を行っても結果が出ない場合や、2回以上の流産歴があるかたには、妊娠率の向上や流産率の低下が期待でき、有効と考えています。

    現在は保険適用外のため、検査する胚盤胞を得るための採卵から胚培養までの費用や、正常胚の移植費用まで、すべてが自費負担となります。

転院を考えるタイミングは

他院で体外受精や顕微授精を受けてもうまくいかず、当院に転院される患者さんは、約3割程度いらっしゃいます。

どんなときに転院するとよい結果が出るか、なかなか一概には言えません。
しかし、何度かトライしても良好な胚ができないなら、そのクリニックでの卵巣刺激法や培養法がご本人に合っていない可能性があり、転院のタイミングかもしれません。

また、医師とのコミュニケーションがうまくとれないと感じる時も転院を考えてもよいかもしれません。
そのかたがたを受け入れるにあたり、当院では必ず前医での治療の内容をしっかりと確認した上で、次の治療の戦略をたてています。

もしお困りごとがありましたら当院までご相談ください。
スタッフ一同、次の一歩に向けて全力でサポートをさせていただきます。
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木場公園クリニックの特徴

木場公園クリニックは体外受精・顕微授精に特化したクリニックです。
少しでも安心して不妊治療を受けていただけるよう、
様々なトータルソリューションをご提案・ご提供いたします。

海外・国内の学会参加による
世界レベルの最先端の治療を追及

開院以来20年にわたり診療で蓄積された診療経験や検査・治療の結果、症例をもとに、
より良い不妊治療の成果を出すために、日々行っている研究や検討を紹介しています。

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着床前胚染色体異数性検査
(PGT-A)

東京の木場公園クリニックは、日本産科婦人科学会から、「反復体外受精・胚移植(ART)不成功例、習慣流産例(反復流産を含む)、染色体構造異常例を対象とした着床前胚染色体異数性検査(PGT-A)の有用性に関する多施設共同研究」の研究分担施設として承認を受けています。

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卵巣刺激
(高刺激・中刺激・低刺激・自然周期)

女性の実年齢と卵巣年齢がイコールではないため、それぞれの方の卵巣の状況に応じて刺激法を選んでいます。
当院では高刺激の患者様と低刺激の患者様の割合は半々です。
高刺激と低刺激のどちらがいいのかではなく、体外受精や顕微授精を行う施設として重要なことはいろいろな卵巣刺激法を選択肢として持っていることです。

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