PGT-A(着床前胚染色体異数性検査)とは? | 木場公園クリニック 不妊・不妊治療専門
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PGT-A(着床前胚染色体異数性検査)とは?

体外受精で得られた受精卵(胚)を移植してもなかなか着床しない、
あるいは妊娠できても流産になってしまうなどの場合、
胚の染色体に異常があることが原因の1つと考えられます。 近年遺伝子解析の技術が進み、胚の染色体を調べて、
異常のないものを選んで移植する方法が行われるようになりました。
これがPGT-A(着床前胚染色体異数性検査)です。 希望すれば誰もが受けられる検査ではなく、また日本産科婦人科学会の認定を受けている施設のみで実施されています。
  1. 目次

  2. PGT-A(着床前胚染色体異数性検査)とは?

     
  3. PGT-Aの検査の流れや方法

     
  4. PGT-Aの対象者

     
  5. PGT-Aのメリットとデメリット

     
  6. PGT-Aの費用

     
  7. 木場公園クリニックにおけるPGT-A

     

PGT-A(着床前胚染色体異数性検査)とは?

年齢が高くなるにつれ、染色体に異常のある卵子や精子はふえていきます。

どちらか一方、あるいは両方に異常があると、受精できなかったり、受精はしても、着床や妊娠継続ができない可能性が高くなります。

染色体異常とは?

染色体は細胞の核の中にある物質で、1本の染色体には、親から子へと受け継がれる数百から数千の遺伝子を含んでいます。ヒトの正常な細胞には、1番から22番の常染色体が2本ずつ、性染色体が2本、合計で23対46本の染色体があります。精子と卵子はつくられる過程で「減数分裂」という作業を行い、それぞれが持つ染色体は半分の23本になっています。それが受精のときに再び対になって、赤ちゃんは46本の染色体をもつことになります。 この分裂のときに、染色体がうまく半分に分離できなかったり、一部分が欠けたり、入れ替わったりすることがあります。染色体の数に過不足がある胚が「異数性胚」で、特定の染色体が1本多く3本あるものを「トリソミー」、1本少ないものを「モノソミー」と呼びます。 特に女性では加齢によってそのリスクが高まることが知られています。 30代前半の女性における胚の異数性率は30%程度ですが、30代後半からその率は上昇し、40歳では約60%、44歳では90%の胚が異数性を示すことが報告されています。 ヒト・染色体

PGT-Aの目的

胚の質(グレード)は見た目で判断され、染色体に異常があるかどうかはわかりません。そのため、そもそも移植に向かない胚を戻してしまい、着床不全や習慣流産などの悲しい結果になることがあります。 子宮に戻す前に、胚の染色体を調べて、数に過不足がない正常な胚を見つけ出すことで、むだになる移植を減らし、流産率の低下や妊娠率、出産率のアップを目ざします。 「着床前検査」と言っても、ただ染色体を調べるだけでなく、胚移植までを行う医療技術です。

PGT-Aの検査の流れや方法

PGT-Aは受精して胚盤胞の状態まで育った胚を調べるので、通常のART(生殖補助医療)のときと同様に、採卵、採精、受精、胚培養を行う必要があります。

PGT-Aの検査の流れ

①体外受精または顕微授精を行い、受精卵を胚盤胞まで培養する ②胚盤胞から将来胎盤になる部分の細胞を5~7個程度採取する(胚生検) ③採取した検体は解析施設に送り、生検後の胚盤胞はいったんすぐに凍結保存する ④解析の結果、検査した胚の判定について説明を受ける ⑤移植可能な胚があれば、融解して移植する PGT-Aの流れ

検査の方法

胚盤胞には将来赤ちゃんになる内側の部分(内部細胞塊)と、胎盤になる外側部分(栄養外胚葉)があります。細胞を採取するのは、胚の発育に与える影響が少ないとされる、胎盤になる部分からです。

胚の判定

解析の結果、胚はA~Dの4段階で判定されます。 A:正常な染色体数で、移植に問題がないとされる胚(正倍数性胚)です。 B:「モザイク胚」と呼ばれ、正常な数の染色体をもつ細胞と異数性のある細胞が混在している状態です。モザイク胚はA判定の胚にくらべると着床率や出産率は低下しますが、モザイク胚を移植して無事に赤ちゃんが生まれたという報告もあり、移植に用いるかどうかについては、慎重に検討する必要があります。 C:異数性胚または構造異常のある胚で、移植には適しません。 D:なんらかの理由で検体の判定ができなかったものです。 なお、PGT-Aでは性別も判明しますが、その結果は原則としてご夫婦には開示されません。
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PGT-Aの対象者

国内のPGT-Aは、この技術が、流産率や妊娠率の低下を改善することができるかどうかを検証する「臨床研究」として始まりました。その結果、すでにARTを受けていて、反復して流産を経験したカップルの胚移植1回あたりの流産率は、PGT-Aを受けることで減少したことが明らかになりました。

PGT-Aの対象者

現在、日本産科婦人科学会が定めるPGT-Aの適応は以下になります。
  • 体外受精・胚移植を行っているが、2回以上不成功の不妊症カップル

  • 過去の妊娠で2回以上の流死産を経験されている不育症カップル

当院でも40歳前後で2回以上胚移植を行っても結果が出ないかた、2回以上の流産の既往のあるかたには、検査をすすめています。形態が良好で、きれいに見える胚盤胞でも、38歳では約50%に、40歳では約70%に、染色体異常があるとされています。 現状では、初回の体外受精からPGT-Aを行うことで、妊娠率や出産率を高めるという有効性が明らかではないため、初回の体外受精で受けることはできません。また、そもそも体外受精の適応ではないカップルが、PGT-Aのために体外受精を受けることも、身体的、精神的、経済的な負担が大きいため、できません。

PGT-Aに適した特性

PGT-Aを行うためには、まず体外受精で得られた受精卵があり、それが培養5~6日後に胚盤胞になることが必要です。すべての受精卵が胚盤胞になるわけではなく、胚盤胞まで育つ確率は30~40%とも言われています。女性の年齢が高くなるにつれて、胚盤胞を得られる確率は残念ながら低くなります。

PGT-SR(着床前胚染色体構造異常検査)

なお、胚染色体の数ではなく、形の異常を調べるのがPGT-SR(着床前胚染色体構造異常検査)です。検査の方法や判定はPGT-Aと同じですが、対象者は、ご夫婦のどちらかに(あるいはどちらにも)染色体の構造異常が認められている場合となります。 こちらは必ずしも反復妊娠不成功や流死産歴がなくても、検査自体は受けることができます。ただし、臨床遺伝専門医の診察と説明を受けることが必須です。

PGT-Aのメリットとデメリット

PGT-Aを受けることによって期待される成果と、注意すべき点についてまとめます。

PGT-Aのメリット

  • 胚移植1回あたりの妊娠率の向上が期待でき、移植回数を減らすことができる

  • 妊娠あたりの流産率の低下の可能性があり、流産による身体的、精神的ダメージを避けられる

  • 高年齢の場合、妊娠出産への時間の短縮につながる可能性がある

PGT-Aのデメリット

  • 検査をした結果、移植可能な胚がなければ、再度検査が必要になることも

  • 胚生検を行うことで、胚が損傷して、妊娠できなかったり、赤ちゃんへ何らかの影響を及ぼすリスクがある

  • 胚の判定は100%正確ではなく、異常のある胚を正常と判定したり、正常な胚が異常ありの判定になることがある。前者の場合は移植して妊娠しても結果的に流産が起こったり、後者では健康な赤ちゃんが生まれるかもしれない胚を排除してしまう可能性がある

  • モザイク胚の扱い(移植の可否)について、まだ不確定な点が多い

  • 高額な費用がかかる

PGT-Aの費用

PGT-Aは現状では保険適用外のため、保険診療で行う周期にPGT-Aを受けることはできず、PGT-Aを実施する周期には、検査胚を得るために行う治療やその後の胚移植費用がすべて自費負担となります。また胚の解析にかかわる費用も別途必要です。

木場公園クリニックにおけるPGT-Aの費用(体外受精の場合)

処 置 金 額(税込)
卵巣刺激に使用する薬剤や検査料 ¥55,000~110,000
採卵 ¥132,000
精子処理 ¥55,000
媒精 ¥55,000
培養 ¥77,000
タイムラプス ¥33,000
透明体開口法 ¥33,000
胚盤胞培養 ¥55,000
タイムラプス ¥33,000
PGT-A検査費 ¥99,000(胚1個あたり)
胚凍結 ¥121,000(2個以上の時1個につき凍結代追加分¥11,000) PGT-Aを行って、
胚移植可能胚がある時は、
胚融解・胚移植の費用がかかります。
胚融解・胚移植 ¥165,000
合計すると、検査胚が1個の場合は約72万円、検査胚が5個の場合は 約115万円となります、*顕微授精の場合は、さらにICSI料金が11万円加算されます。

木場公園クリニックにおけるPGT-A

木場公園クリニックは、2020年より、学会の臨床研究の分担施設および解析施設として承認を受け、PGT-Aに関する知識や技術を習得し、確立してきました。以前はPGT-Aの解析を自施設で行なっていましたが、現在は外部の検査センターに委託しており、染色体の異数性(トリソミーやモノソミー)の有無だけでなく、染色体数が69本ある3倍体や92本の4倍体など、これまでの検査方法ではわからなかった異常も検出できます。

当院では、PGT-Aを受けた結果、これまでで100人以上の赤ちゃんが無事誕生しています。その一例をご紹介しましょう。 40歳で、卵巣機能は比較的良好な患者さんでした。2回胚移植を行いましたが、2回とも妊娠判定が陰性だったため、PGT-Aのメリットとデメリットについてご夫婦にくわしく説明をしたところ、ご夫婦間で十分に相談の上、PGT-Aを受けることを希望されました。 そこで、高刺激法による卵巣刺激を行なって、良好な胚盤胞が5個でき、PGT-Aを実施。5個中3個は染色体異常、2個が正常でした。ホルモン補充周期による融解胚盤胞移植を行なって、妊娠が成立、元気な赤ちゃんが生まれました。その後、2人目希望で来院され、凍結保存していたもうひとつの胚盤胞で、再度ホルモン補充周期による融解胚移植を実施して妊娠、現在妊娠中期です。 院長である私は、生殖医療専門医としての経験に加えて、臨床遺伝専門医の資格ももっており、検査結果がモザイクと出たときには、何番の染色体が何%程度の異常なのかによって移植可能胚かどうかを判断し、患者さんにくわしく説明をしています。妊娠成立したときも、患者さんの希望があれば、妊娠初期に胎児精密超音波検査を行い、そこで異常が疑われれば羊水検査を行うこともあります。胚移植の可能性から赤ちゃんへの影響など、患者さんの悩みや不安に寄り添って、十分な遺伝カウンセリングができるのが大きな強みです。 患者さんのためには、将来的にPGT-Aが保険適用になればよいのですが、倫理的な側面など検討課題がまだ多くあり、なかなか簡単には進まないと考えています。それでも、対象となる患者さんにとっては確実に有効な検査です。高額になりますので、十分な説明をしたうえで、検査を受けるかどうかは患者さんご自身に判断していただきます。
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木場公園クリニックの特徴

木場公園クリニックは体外受精・顕微授精に特化したクリニックです。
少しでも安心して不妊治療を受けていただけるよう、
様々なトータルソリューションをご提案・ご提供いたします。

海外・国内の学会参加による
世界レベルの最先端の治療を追及

開院以来20年にわたり診療で蓄積された診療経験や検査・治療の結果、症例をもとに、
より良い不妊治療の成果を出すために、日々行っている研究や検討を紹介しています。

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着床前胚染色体異数性検査
(PGT-A)

東京の木場公園クリニックは、日本産科婦人科学会から、「反復体外受精・胚移植(ART)不成功例、習慣流産例(反復流産を含む)、染色体構造異常例を対象とした着床前胚染色体異数性検査(PGT-A)の有用性に関する多施設共同研究」の研究分担施設として承認を受けています。

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当院では高刺激の患者様と低刺激の患者様の割合は半々です。
高刺激と低刺激のどちらがいいのかではなく、体外受精や顕微授精を行う施設として重要なことはいろいろな卵巣刺激法を選択肢として持っていることです。

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