顕微授精で妊娠判定が出るまでの流れと
安心できる施設の選び方
更新日時:2025.10.20

1992年にPalermo博士によって報告されたこの技術により、通常の体外受精では妊娠が難しかった重度の男性不妊の方でも、赤ちゃんを抱くことができるようになりました。
顕微授精は、受精卵(胚)を育てるために培養庫(インキュベーター)内で2〜6日間培養します。
受精卵(胚)を子宮に戻すことを「胚移植」と言いますが、採卵した周期にそのまま受精卵(胚)を戻す「新鮮胚移植」と、受精卵(胚)を一度凍結してから別の月経周期に移植する「融解胚移植」があり、いずれも、黄体ホルモンや卵胞ホルモンの補充を行ってから、妊娠判定を行います。
妊娠率を高めるためには、安全なシステムの中顕微授精が行う「施設選び」も非常に需要なポイントです。
顕微授精とは?
顕微授精とは、形態と運動性が良好な精子を選択して、ガラス製の針を使用して1匹の精子を卵子に注入して受精させる方法です。
顕微授精では、精子数が非常に少ない高度乏精子症などの重度男性不妊の方でも治療が可能です。
顕微授精の基礎知識
顕微授精とは、体外受精における受精方法の一つで、1992年にPalermo博士から報告された画期的な技術です。現在では顕微授精と言えば、ガラス製の針を使用して卵子に一匹の精子を注入する方法の「卵細胞質内精子注入法(ICSI)」を指すのが一般的です。
卵細胞質内精子注入法(ICSI)が報告される以前は、「透明体部分切開法(PZD)」や「囲卵腔内精子注入法(SUZI)」といった技術も行われていましたが、現在では卵細胞質内精子注入法(ICSI)が主流となっています。
この技術によって、それまでは妊娠が難しかった重度の男性不妊のカップルでも治療が可能となりました。
体外受精では、卵子が入っている培養液の中に運動性の良好な精子を添加して、精子自身の力で受精させて受精卵を作ります。
しかし、ある程度以上の運動精子がなければ、体外受精では受精が成立しません。
一方、顕微授精は、形態や運動性の良好な精子を選択し、ガラス製の針を使用して1匹の精子を直接卵子に注入して受精させます。そのため精子数が非常に少ない高度乏精子症などの重度男性不妊の方でも治療が可能です。
顕微授精の適応は、
- 精子数が極めて少ないなど、体外受精を実施するための十分な精子がない場合
- 過去の体外受精で受精障害が認められた場合
- 無精子症などで、精巣内から採取した精子を使用する場合
- 夫に抗精子抗体が確認されている場合
また、重度の男性不妊(高度乏精子症など)においては、自然妊娠や人工授精による妊娠が極めて困難なため、患者様のご希望があれば、人工授精などの一般不妊治療は実施せず、初めから顕微授精を行うこともあります。
体外受精・顕微授精の妊娠率、流産率
体外受精や顕微授精による妊娠率は、女性の年齢に大きく影響を受けます。女性の年齢が上がると、妊娠率は下がります。
一方で、体外受精や顕微授精の流産率が自然妊娠と比較して極端に高いというわけではありません。
自然妊娠や人工授精においても、ある程度の割合で流産が起こるのは一般的です。
体外受精や顕微授精で「流産率が高い」印象があるのは、治療を受ける患者様の年齢が高めであることが影響していると考えられます。
木場公園クリニックの成功率を詳しく
顕微授精の流れ【採卵から妊娠判定まで】
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採卵
顕微授精を行うためには、まず卵子を採取(採卵)する必要があります。
各種卵巣刺激法で卵子が入っている卵胞を成長させて、卵胞の大きさとホルモン値をもとに、適切なタイミングで採卵日を決定します。
採卵日の2日前の夜には、卵子の成熟を促すために、ホルモン(hCG)注射と鼻のスプレー(GnRHアナログ)を使用します。
そして、成熟卵を採取するために、排卵直前のタイミングで採卵を行ないます。
採卵は経膣の超音波下で、局所麻酔または静脈麻酔を使用して卵胞内の卵子を採取します。
採取された卵子は、付着物を取り除いた後、培養液に入れて顕微授精に備えて培養します。 -
精子の選定
精子は排卵日に合わせて採取しますが、禁欲期間が長いと精子の質が低下するため、約3日間の禁欲期間で精液を採取します。
採取した精液からは、密度勾配遠心法 とswim up法を組み合わせて運動良好精子を回収します。
さらに、精子の形態が正常で運動性が良好な精子を選別します。
顕微授精では、「インジェクションピペット」(顕微授精で精子を卵子に注入するためのガラス製の非常に細いピペット)を使って、精子を卵子に注入します。その際、精子の中片部をピペットで押さえつけて精子の動きを止める「不動化処理」を行います。
この不動化処理によって、精子の中にある「卵活性化物質」が放出されやすくなります。
不動化された精子は、尾部からインジェクションピペットで吸引し、卵子に注入されます。 -
精子の注入(顕微授精)
卵子をガラス製のホールディングピペットでしっかりと固定します。
次に、精子を吸引したインジェクションピペットを用いて透明帯を貫通させ、卵細胞質内へと慎重に進めていきます。細胞膜が破れたことを確認したうえで、精子を卵子の中へ注入します。 -
胚の培養
体外受精や顕微授精を行った後は、受精卵(胚)を2〜6日間、インキュベーター内で培養を行います。
この胚を育てるための「培養液」には、2つのタイプがあります。
- 逐次培養液(sequential medium)
- シングルメディウム(single medium)
どの段階 時期まで胚を培養するのか、そして
- 採卵した周期にそのまま移植を行う「新鮮胚移植」にするか
- 胚を一度凍結し、次の周期に子宮内膜の状態を整えてから移植する「凍結融解胚移植」にするか
これらの判断は、妊娠率や治療成績を左右する大切な要素となります。 -
胚移植
胚(受精卵)を子宮腔内に戻すことを「胚移植」と言います。
胚移植には、採卵した周期の「新鮮胚」(分割期胚または胚盤胞)を使用する場合と、「凍結融解胚」(分割期胚または胚盤胞)を使用する場合があります。
安全性を考慮し、多胎妊娠(双子・三つ子など)を避けるために、移植に使用する胚の個数は原則的には1個です。
胚移植の際には、培養室で準備された胚を胚移植用のカテーテルに吸って、胚培養士から医師へとに渡されます。医師は、子宮が収縮しないようにそっと、カテーテルを子宮腔内に進めて胚を子宮に戻します。 -
黄体補充
採卵の際には、卵子とともに卵胞液も吸引されるため、本来黄体になるはずの細胞も一緒に失われます。そのため、体内での黄体機能が低下しやすく、「黄体機能不全」と呼ばれる状態になることがあります。
黄体は、本来「黄体ホルモン」と「卵胞ホルモン」の2種類のホルモンを分泌しています。そのため、治療では2種類のホルモンを補充しています。
自然周期法、低刺激法、または中刺激法では、エストラジオールと黄体ホルモンの膣錠で補充します。
一方、高刺激法ではエストラーナと黄体ホルモンの膣錠で黄体補充を行ないます。 -
妊娠判定
当院では、妊娠判定は血液検査で行っています。
妊娠判定を行うタイミングは、移植した胚の状態によってことなります。
- 初期胚(分割期胚)を移植した場合:移植から約14日後
- 胚盤胞を移植した場合:移植から約12日後
安心できる施設の選び方と木場公園クリニックの特徴
安心できる施設の選び方として、安全なシステムの中で、顕微授精が行われているかが重要です。
安心できる施設の選び方
顕微授精をはじめとする不妊治療では、『安全第一』で不妊治療が行われているかどうかが、施設選びにおいて非常に重要です。クリニックは病院とは異なり、病院評価機構による評価を受けることができないため、別の視点での信頼性チェックが必要になります。
ISO9001を取得しているか、クリニック間で相互に監査が行われているかが、施設選びのポイントになると思います。
安心できる施設の選びのポイントには以下があります。
- ISO9001などの第三者認証を取得している
- クリニック間で相互に監査を実施している
- 不妊治療の専門医(生殖医療専門医)が在籍している
- 胚培養室(ラボ)や検査設備が整っている
- 妊娠率などの治療成績を開示している
- 不妊治療件数が多く、実績がある
- 女性不妊症と男性不妊症の治療の経験が多い
- 卵巣刺激法など、治療の選択肢が多い
木場公園クリニックの特徴
木場公園クリニックは、都市型の不妊治療専門施設として、約27年の実績を持ち、年間1,000件ほどの採卵を行なっているクリニックです。不妊治療のメインコンセプトは、一人の医師が女性不妊と男性不妊の両方を診察・治療できる体制を整えていることです。
また、患者様の心理的な障害を軽減するために、一人目不妊治療フロアーとお子様連れ不妊治療フロアー(One More Baby Floor)が分かれています。さらに、心理カウンセラーも在籍しており、治療中の心のケアも力を入れています。
当院はISO9001を取得しているため、安全な不妊治療を提供できるためのシステムが構築されています。
年に二回の内部監査と年一回の外部監査を受けています。
また、当院はJISART(JISARTとは不妊治療を専門とするクリニックによって結成された団体です。子どもが欲しいと願うご夫婦に安心して、満足できる医療を受けていただくことを目的として活動しており、現在、全国29施設が加盟しています)のメンバーで、3年に一回外部監査を受けています。
院長 吉田 淳医師個人の実績(開業1999年1月~2024年12月)
- 採卵:1万7460件
- 胚移植:2万4083件
- 精巣内精子回収法:1105件
木場公園クリニックの顕微授精の特徴
- ICSI(顕微授精)
- IMSI(高倍率顕微授精)
- ピエゾ-ICSI(圧電素子を用いた顕微授精)
- ピエゾ-IMSI(高倍率+ピエゾ技術の併用)
さらに、胚盤胞到達率の高い培養液を使用し、「タイムラプスシステム」(胚の発育を自動で継続観察できる装置)にて、胚の育ち方を細かく観察・管理しています。これにより、着床に適した良好な胚を選ぶことが可能になります。
一方、ピエゾ-ICSIでは、針の先端が平らでとがっていないインジェクションピペットを使用します。
この針を卵子に軽く押し当て、ピエゾユニットという装置から発生するごく微細な振動(ピエゾパルス)で、透明帯に小さな穴をあけます。続いて、卵子内部の膜も振動で破ることで、卵細胞質に精子を注入します。
この方法は、
- 卵子を吸引する必要がない
- 針を深く刺し込まなくてよい
ICSIが始められた当初は、精子の運動性に主に注目して精子を選別していました。
しかし近年では、精子は単に受精に関係するだけではなく、精子の「質」そのものが、胚の質、妊娠、出生児の成長・発達まで影響することがわかってきています。
精子のサイズは胚や卵と比べて約20分の1しかないにもかかわらず、ICSIにおける精子は、卵や胚を通常観察する際に用いる400倍率の倒立顕微鏡下で、 観察・評価・選別しています。
精子を詳細に観察して選別するために、ICSIに用いる倒立顕微鏡の観察倍率を上昇させて、解像度を高めることで、より細かく精子の形態(特に精子頭部における空胞の有無)を観察しながら良い精子を選別し、それを顕微授精に用いるのがIMSI(Intracytoplasmic
Morphologically selected Sperm Injection) 形態良好精子選別後顕微授精です。
通常のICSIでは400倍〜600倍で精子を選んで顕微授精を行っていますが、IMSIでは6,000倍〜12,000倍の高倍率下で精子を選んで顕微授精を行います。
400 倍で観察した時は正常と判断した精子を、約6,000 倍〜12,000倍に拡大してみると、精子の頭の部分に空胞(抜けている部分)を認めることがあります。
精子の頭部に空胞がない、または、少ない精子を使用して顕微授精を行うと、胚盤胞到達率が高くなり、着床率、生産率が高くなると報告されています。
- 逐次培養液(sequential medium)
- 単一培養液(single medium)
胚盤胞の状態まで発育させるsequential mediumを開発したDavid K Gardner先生の培養液(Vitrolife社のG-Series™培養液)を当院では開業以来27年間使用しています。
培養の途中で培養液を交換するsequential mediumでは培養業務が煩雑になるため、single mediumで培養している施設が増えてきていますが、当院ではsequential mediumとsingle mediumの成績を比較したところ、sequential mediumの成績が良かったため、たとえ業務負担が増えようとも胚にとって最適なsequential mediumで顕微授精実施後の患者様の大切な卵子を培養しています。
タイムラプスとは、一定間隔で胚を撮影して、その写真を連続で映し出すことで動画のように見ることができる技術です。
従来の胚の観察は、胚を培養している培養器(インキュベーター)から胚を取り出して顕微鏡下で行われていました。
当院が採用しているEmbryoScope+(タイムラプスシステム)では、培養器の中にカメラが内蔵されているため、胚を外に取り出さなくても10分毎に器械が胚を撮影してデータが蓄積されます。
タイムラプスシステムでは得られる胚の情報量が多くなるだけではなく、胚を培養する環境が一定となるため、良好な胚盤胞が得られる確率が増加します。
当院のデータでは、胚盤胞到達率(発生率)は従来のインキュベーターでは48.8%、EmbryoScope+では60.0%と、EmbryoScope+で胚盤胞到達率(発生率)が高い結果でした。
当院では患者様に診察室のPCモニター上でタイムラプス動画をお見せしながら、胚の説明をしています。
木場公園クリニックで行う「妊娠しやすい体づくり」のサポート
当院では治療と並行して妊娠しやすい体づくりのサポートをするため、以下のような取り組みを行っています。
- 栄養解析にもとづくサプリメントの個別処方
このように、医療的な治療だけでなく、体の内側から妊娠しやすい状態を整えるサポートも大切にしています。
卵子と精子は、自分の体中にある栄養素を使用して作られています。
そのため、体に必要な栄養素が十分に足りていないと、胚の質にも影響を与える可能性があります。
実際に、胚の質が思わしくなかった方が、栄養解析に基づき不足している栄養素をサプリメントで補充した結果、胚の質が良くなり子供を得たという報告もあります。
卵子や精子が作られた時の体の状況が、生まれてくる子供の健康に関連しているのです。
当院では、胚の質が悪い場合や希望の患者様には栄養解析を行い、不足している栄養素をサプリメントで個別に補充しています。
栄養解析の流れ:
1.WEB栄養解析問診表の記入
患者様の生活習慣・食事・体質・環境などを詳しく把握するために、ホームページ上の問診表をご記入いただきます。
2.採血(8時間の絶食が必要です)
採血前8時間はお水のみOKで、お茶やコーヒーなどは控えていただきます。
ご来院のうえ、採血を行います。
3.解析とレポート作成
問診表の内容と、約70項目にわたる血液データをもとに栄養解析を行います。
この解析は、オーソモレキュラー栄養医学の第一人者である**溝口徹医師(新宿溝口クリニック)らのグループが監修しています。
「オーソモレキュラー」とは、“分子を整える”**という意味をもつ栄養療法です。
4.結果説明とサプリメント処方
約1か月後、「栄養解析レポート」を使用して結果をご説明いたします。
そのうえで、患者様一人ひとりの体に不足している栄養素を、**医療機関専用の高品質サプリメント(MSS社製、日本製)**で補っていきます。
これらのサプリメントは、医薬品と同等の品質管理のもとで製造されており、安心してご使用いただけます。
受付・診療時間
| 時間/曜日 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 |
|---|---|---|---|---|---|---|
|
午前
午前8:30-12:00
午後
午後13:30-16:30 |
吉田 関本 巷岡 西川 杉山 | 吉田 関本 巷岡 西川 | 巷岡 西川 | 吉田 関本 巷岡 西川 米澤 | 関本 西川 | 吉田 関本 杉山 岩原 松浦 |
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木場公園クリニックの特徴
木場公園クリニックは体外受精・顕微授精に特化したクリニックです。
少しでも安心して不妊治療を受けていただけるよう、
様々なトータルソリューションをご提案・ご提供いたします。

