卵巣刺激法の種類と内容|体外受精の
成功率を上げるために重要なこと
経験がある不妊治療専門医の腕の見せ所だと思います。 卵巣刺激法には高刺激法、中刺激法、低刺激法、自然周期法があります。
卵巣の機能がいい場合は、どの方法でも選択できますが、卵巣の機能が悪い場合は、低刺激法または自然周期法しか選択できません。 選択した卵巣刺激法で良好な胚ができない場合には、常に別の卵巣刺激法に変更することを考えておく必要があります。
不妊治療専門施設として重要なことは、いろいろな卵巣刺激法の選択肢を持っていることです。
「【卵巣刺激法】 木場公園クリニック吉田院長が分かりやすく解説します!」 もご用意しております。合わせてご視聴ください。
卵巣刺激法の基礎知識
採卵をするための卵巣刺激法には、高刺激法、中刺激法、低刺激法、自然周期法があります。
卵巣刺激法とは
卵巣刺激法とは、排卵誘発剤の注射薬(FSH, hMG)またはクロミフェンなどの内服薬を使用し、排卵を誘発する治療法のことで、妊娠率を高める上で重要です。
妊娠の確率を少しでも上げるために、複数の卵胞を発育させ、成熟卵の数を増やし採卵するために卵巣刺激は行います。 女性の体では、自然では月経周期に1個の卵子が排卵されていますが、その卵子を採卵したとしても必ず受精し、
良好な胚になるとは限りません。
卵巣刺激法には、高刺激法、中刺激法、低刺激法、自然周期法があります。 卵巣の機能がいい場合は、どの方法でも選択できますが、卵巣の機能が悪い場合は、低刺激法または自然周期法しか選択できません。 選択した卵巣刺激法で良好な胚ができない場合には、常に別の卵巣刺激法に変更することを考えておく必要があります。
不妊治療専門施設として重要なことは、いろいろな卵巣刺激法の選択肢を持っていることのため、
いろいろな選択肢のある施設で不妊治療を行ったほうが良いと思います。
卵巣刺激法の主な種類
採卵するための卵巣刺激法には、高刺激法(ウルトラロング法、ロング法、ショート法、アンタゴニスト法)、中刺激法(高刺激法と低刺激法の中間の卵巣刺激法)、低刺激法(クロミフェンなどの排卵誘発剤の飲み薬と少量の注射を使用)、自然周期法(注射も内服も排卵誘発剤の薬を使わない)があります。卵巣刺激法の具体的な方法
ロング法とショート法
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ロング法
体外受精の前周期の3日目から、中容量ピルであるプラノバールを14~28錠使用し、ピル終了日の2日前から、GnRH アゴニストの点鼻薬を採卵日の2日前まで使用します。
GnRH アゴニストは卵巣刺激中に、黄体形成ホルモンが急激に上昇して、採卵前に排卵がおこるのを抑制するために使用します。 ピル終了後8日目に、ホルモン検査と超音波検査を行って、LH値と胞状卵胞数をもとに排卵誘発剤の注射の種類と量を決定して注射を開始します。
卵巣刺激の途中から、hMGを追加して18mm以上の卵胞が2個以上あれば、rhCG(オビドレル)でトリガーをかけて、
約35時間後に採卵を実施します。 トリガーのタイミングはトップ2個の卵胞径のみで決めるのではなく、卵胞数とE2値も考慮して決定します。 -
ショート法
ロング法よりGnRH アゴニストを使用する期間が短いため、ショート法と言います。 GnRHアゴニストを採卵周期の月経1日目から採卵日の2日前まで使用して、月経3日目から排卵誘発剤の注射を使用する方法です。
GnRHアゴニストの初期のフレアーアップ効果によって一時的にFSHとLHが上昇することにより卵巣を刺激、数日後にはGnRHアゴニストによる下垂体へのダウンレギュレーションにより排卵を抑える作用を利用します。
当院ではショート法でも、卵巣機能が低下していない場合は、卵巣刺激前周期の月経3日目から中容量ピルのプラノバールを7~14錠使用しています。 一般的にはショート法ではロング法より少し早めに採卵をした方がいいとされています。
アンタゴニスト法
アンタゴニスト法は、短時間で強い効きめのGnRH アンタゴニストで排卵を抑制しながら、卵巣刺激を行なう方法です。採卵前周期の月経3日目からプラノバールを7から21日間使用、プラノバールの期間は卵巣力をもとに決定します。 プラノバール終了後4日目から卵巣刺激を開始します。
排卵誘発剤の量は胞状卵胞数と過去の卵巣刺激のデータをもとに決定します。 原則的には主席卵胞の平均径が14mmになったらGnRH アンタゴニストを開始します。
GnRHアンタゴニストは卵巣刺激にとっては強いブレーキとなるため、ブレーキが効きすぎないようにするために、
低用量hCGを50単位または100単位を併用します。 GnRH アンタゴニストは夕方5時頃に使用しているため、トリガー日にはGnRH アンタゴニストは原則的には使用しません。
また、トリガー日にも排卵誘発剤の注射は原則的に前日と同量使用します。 GnRH アゴニストとrhCGを併用したトリガーで卵子を最終成熟させて、排卵が起きる直前に採卵します。 トリガーには、GnRH アゴニストとrhCGを併用した方が、成熟卵が得られる確率が高くなります。
中刺激法
中刺激法とは、高刺激法と低刺激法の中間の卵巣刺激法です。フェマーラと少量の排卵誘発剤の注射のhMGを使用します。 LHサージが卵巣刺激中におきた時を除いて、原則的にGnRH アンタゴニストは使用しません。
高刺激法と比較すると採卵個数は少なくなりますが、卵巣過剰刺激症候群になる可能性が低く、E2値もあまり高くならないために、採卵した周期に胚移植を実施することができます。 トリガーには、GnRH アゴニストとrhCGを併用しますが、併用した方が卵子の成熟率が高くなります。
低刺激法
低刺激法にはクロミッド法、クロミッド-hMG法、フェマーラ法、フェマーラ-hMG法などがあります。卵子を最終的に成熟させるためのトリガーは、GnRH アゴニストを使用する場合、rhCGを使用する場合、両方を併用する場合があります。
また、クロミッドやフェマーラを開始する時期と期間や使用量(1/8-2錠/日など)、hMGやFSHの追加の有無などいろいろな方法がありますが、ホルモン値をリアルタイムでみる必要があります。
自然周期法
自然周期法とは名前の通り、排卵誘発剤の注射も内服薬も使用しないで、卵子を採取する方法です。採卵のタイミングを合わせるために、卵胞が成長したら、GnRH agonistでトリガーをかけて採卵をします。 自然周期法では、採卵時にすでに排卵済みや採卵しても卵子が回収できない確率が他の卵巣刺激法と比べると高くなります。
卵巣年齢に適した卵巣刺激法を提供する木場クリニック
卵巣年齢に適した卵巣刺激法のスケジュールを選択することは、良好な受精卵を得るために非常に重要です。
木場公園クリニックの概要
木場公園クリニックの卵巣刺激法の特徴
卵巣刺激を実施する前に卵巣の機能を評価することは、ARTによって、どれくらいの成績をあげられるかを患者様に説明をすることが可能になり、かつそれぞれの患者様にあった卵巣刺激を個別化できるという点で、非常に重要です。 女性の実年齢と卵巣年齢はイコールではないため、それぞれの卵巣力の状態に合わせて卵巣刺激法を選択しています。
卵巣刺激法には、高刺激法、中刺激法、低刺激法、自然周期法があります。 卵巣の機能がいい場合は、どの方法でも選択できますが、卵巣の機能が悪い場合は、原則的に低刺激法または自然周期法しか選択できません。
卵巣刺激法は、AMH、採卵前周期の月経1~3日目の胞状卵胞数とFSH値など卵巣力の状態をもとに決定しますが、その他卵巣嚢腫で卵巣嚢腫核出術を受けたなどの過去の手術の既往や過去の卵巣刺激に対する反応、PCOSの有無、視床下部性または下垂体性の排卵障害の有無も考慮します。
また、ARTの既往がある場合には、穿刺卵胞当たりの卵子回収率、MII率、卵子の状態、受精率、分割率、Day3での良好胚率、胚盤胞到達率なども考慮します。 実際に卵巣刺激を行う周期の卵巣刺激直前の胞状卵胞数と採卵前周期の月経1~3日目の胞状卵胞数、AMH値、LH値、過去の卵巣刺激に対する反応性を考慮しながら、排卵誘発剤の種類や量を決定しています。 排卵誘発剤の注射による副作用である卵巣過剰刺激症候群(OHSS)の発生を減らすために、胞状卵胞数やAMH値によって排卵誘発剤の量を変えることは非常に重要です。
また、選択した卵巣刺激法で良好な胚ができない場合には、常に別の卵巣刺激法に変更することを考えておく必要があります。 例えば、卵巣機能が良好にもかかわらずロング法で結果が出ない時に、アンタゴニスト法に変更しただけで良好な胚が得られることもあります。 卵巣機能が非常にいい症例で、ロング法、アンタゴニスト法、低刺激法すべて胚移植に値する胚ができず、自然周期で良好な胚ができて、児を獲得したケースもあります。 また、卵巣機能はいいが低刺激法を10回以上行ってきたが、胚盤胞ができない症例を対象として、高刺激法を実施すると約8割で良好な胚盤胞が数個獲得できます。
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卵巣予備能力(卵巣力)の評価
卵巣予備能力(卵巣力)は、年齢、胞状卵胞数、AMH(抗ミューラー管ホルモン)、卵胞刺激ホルモン(FSH)、E2(卵胞ホルモン・エストロゲン)、卵巣容積、喫煙の有無などから評価をします。 中でも胞状卵胞数が最も重要です。
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既往歴や障害など
また、卵巣の機能は、過去の卵巣手術の既往、過去の卵巣刺激に対する反応、PCOS(多嚢胞性卵巣)かどうかなども考慮して判断します。
「卵巣刺激法がARTの結果に大きく影響する」
採卵するための卵巣刺激法には、高刺激法、中刺激法、低刺激法、自然周期法がありますが、臨床医がARTに関与する中で、適切な卵巣刺激法の選択は非常に重要です。 卵巣刺激法の選択を誤ると、顕微授精でも受精障害がおきることがあります。
顕微授精の受精障害の原因には、卵子や精子の質が悪いためつまり患者さん自身の問題で受精障害がおきる時と、卵巣刺激法が適切でなかったまたは培養室内の環境が悪いなど我々医療サイド側の理由で受精障害がおきる時があります。 中刺激法で4個採卵、4個に顕微授精を実施したが、全て受精しなかったため、転院されてきた患者様にアンタゴニスト法による高刺激法で採卵・顕微授精を行ったところ、約90%で受精が成立した患者様がいました。 この方は、中刺激による卵巣刺激法がフィットしてなかったのです。
常に、どのような卵巣刺激を実施して、どのタイミングでアンタゴニストを使用したのかなどを、卵巣刺激のチャートを見て確認する必要があります。 低刺激法に合わない場合または高刺激に合わない場合があるので、常に医師は選択した卵巣刺激法が患者さんにフィットしているかを考えなければなりません。 卵巣刺激法がARTの結果に大きく影響するからです。
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