体外受精の成功率|妊娠しやすい状態へ導く6つのポイントとは? | 木場公園クリニック 不妊・不妊治療専門
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体外受精の成功率|妊娠しやすい
状態へ導く6つのポイントとは?

体外受精や顕微授精などの高度にヒトの手がかかった不妊治療のことをART(高度生殖補助技術)と言います。
2017年度のデータを見ると、出生児の16人に1人は体外受精・顕微授精児です。
体外受精や顕微授精(ICSI)の成功率を高めるには以下の6個のポイントが重要です。
  1. ART実施前検査
  2. 卵巣機能を評価した適切な卵巣刺激
  3. 採卵
  4. 培養室業務
  5. 胚の選別と胚移植
  6. 黄体補充
  1. 目次

  2. 体外受精の成功率

  3. 体外受精を成功に導く6つのポイント

  4. 「体外受精は患者様と協同のチーム医療」

体外受精の成功率

体外受精で我々が患者様と目指しているゴールは、お子様を分娩して、自宅に連れて帰ることです。 体外受精の成績を1%でもあげるために、妥協しない姿勢が必要です。

体外受精・顕微授精の成功率を測る項目には、1回の胚移植当たりの臨床妊娠率(FHM率:胎児の心拍が確認できた率)、1回の胚移植当たりの分娩率、移植した胚の個数当たりの着床率などがあります。
体外受精や顕微授精の成績には、卵子や精子の質と不妊治療専門機関の実力が大きく影響します。

木場公園クリニックにおける体外受精の成功率

体外受精では、経腟超音波下に採取した卵子が入っている培養液の中に、運動性の良好な精子を注入して、精子自身の自然の力で受精させて、受精卵を作ります。
一方、顕微授精は、ガラス製の針を使用して1匹の精子を卵子に注入して受精させて、受精卵を作ります。
できた受精卵を子宮に戻すことを胚移植と言います。
このグラフは、当院(木場公園クリニック)の体外受精・顕微授精における採卵周期に新鮮胚移植を実施した方の成績です。
1回の胚移植当たりの臨床妊娠率(胎児の心拍が確認できた率)は、妻の年齢が30歳未満では50.8%、30歳以上35歳未満では45.0%、35歳以上40歳未満では32.0%、40歳以上では11.1%でした。(注意:採卵あたりのデータでは複数個受精卵ができた場合は累積妊娠率が高くなります)1回の胚移植当たりの分娩率は、妻の年齢が30歳未満では45.5%、30歳以上35歳未満では38.1%、35歳以上40歳未満では24.7%、40歳以上では6.3%でした。

このグラフは、当院(木場公園クリニック)の体外受精・顕微授精における採卵周期に新鮮胚移植を実施した妻の年齢が40歳以上の方の成績です。
1回の胚移植当たりの臨床妊娠率(胎児の心拍が確認できた率)は、妻の年齢が40歳~41歳では16.6%、42歳~43歳では9.3%、44歳~45歳では3.7%、46歳以上では0.4%でした。(注意:採卵あたりのデータでは複数個受精卵ができた場合は累積妊娠率が高くなります)1回の胚移植当たりの分娩率は、妻の年齢が40歳~41歳では10.4%、42歳~43歳では4.9%、44歳~45歳では0.8%、46歳以上では0.0%でした。

胚盤胞移植とは、体外受精または顕微授精を行なって受精させた後、分割期胚から胚盤胞まで培養を進めて、胚盤胞になった胚を子宮に戻す方法です。
確実に胚盤胞まで成長した胚を選択して胚移植できる点で、分割期胚移植と比較すると妊娠率が高くなります。
胚盤胞移植には採卵周期に胚移植を行う新鮮胚盤胞移植と一度胚を凍結・融解して胚移植を行う凍結融解胚盤胞移植があります。
このグラフは、当院(木場公園クリニック)の凍結融解胚盤胞移植を実施した方の成績です。
1回の胚移植当たりの臨床妊娠率(胎児の心拍が確認できた率)は、妻の年齢が30歳未満では46.9%、30歳以上35歳未満では43.8%、35歳以上40歳未満では35.3%、40歳以上では20.9%でした。
1回の胚移植当たりの分娩率は、妻の年齢が30歳未満では41.3%、30歳以上35歳未満では36.6%、35歳以上40歳未満では28.8%、40歳以上では15.7%でした。

このグラフは、当院(木場公園クリニック)の妻の年齢が40歳以上の凍結融解胚盤胞移植の成績です。
1回の胚移植当たりの臨床妊娠率(胎児の心拍が確認できた率)は、妻の年齢が40歳~41歳では25.1%、42歳~43歳では16.7%、44歳~45歳では12.9%、46歳以上では3.3%でした。
1回の胚移植当たりの分娩率は、妻の年齢が40歳~41歳では19.0%、42歳~43歳では12.4%、44歳~45歳では10.1%、46歳以上では1.7%でした。

体外受精を成功に導く6つのポイント

体外受精で良好な妊娠率を得るためには以下の6つのポイントが重要です。

  1. 体外受精実施前の検査 
  2. 卵巣の機能を評価した適切な卵巣刺激 
  3. 採卵 
  4. 培養室業務 
  5. 胚の選別と胚移植 
  6. 黄体補充。 

体外受精実施前の精密な検査

女性にも男性にも体外受精のスケジュールに入る前に検査を実施します。
女性には、超音波検査、感染症検査、甲状腺機能検査、末梢血検査、血液型及び出血凝固系検査、ホルモン検査を実施します。
超音波検査では、子宮筋腫、子宮内膜症、卵巣嚢腫、子宮奇形、卵管水腫の有無を検索します。
また、月経時に卵巣内に見える小さい卵胞(胞状卵胞)を数えて、卵巣力を判定します。

感染症検査では、梅毒、B型肝炎、C型肝炎、エイズ、将来白血病になるかもしれないウイルスの検査を行います。
甲状腺機能検査では、下垂体から分泌されている甲状腺刺激ホルモン(TSH)と甲状腺から分泌されている二種類の甲状腺ホルモン(freeT3,freeT4)の検査を行います。

採卵は、お腹は切りませんが、膣から卵巣に針を刺す小手術ですので、末梢血検査、血液型や出血凝固系検査を行います。
月経時のホルモン検査では、FSH,LH E2,プロラクチン検査を行います。

一方、男性には、精液検査、精液培養、クルーガーテスト、SCSA、感染症検査、抗精子抗体検査を行います。
精液検査を実施して、ART直前の精液所見を確認して、体外受精、顕微授精、体外受精と顕微授精半々の判断をします。
精液培養は精液中の雑菌の有無を調べる検査です。

クルーガーテストは、精子形態を調べる検査ですが、その結果は体外受精の受精率と相関します。
SCSA(精子クロマチン構造検査)は、精子の頭の中の核の状態(精子クロマチンの欠陥やDNAの損傷など)を検出する方法です。
感染症検査は、女性と同じ項目を調べます。
血液中に抗精子抗体がないかを検査します。

卵巣予備能(卵巣力)に基づく卵巣刺激

卵巣予備能(卵巣力)とは、卵巣の機能のことで、Ovarian reserveとも言われます。
卵巣予備能(卵巣力)は、女性の年齢ではなく、月経中に卵巣内に見える胞状卵胞数や血液中のAMH(抗ミューラー管ホルモン)の値をもとに判定します。
卵巣予備能(卵巣力)に応じて、それぞれの患者さまにフィットした卵巣刺激法を選択して、卵子を成長させます。

安全で配慮の行き届いた採卵

経腟超音波プローブに卵胞穿刺用のガイドを装着、膣から卵巣内の卵胞に採卵針を刺して、卵子が入っている卵胞液をポンプで吸引します。
超音波断層装置は解像度の高いGEヘルスケアジャパン社のP8を使用しています。
経腟超音波プローブは採卵前に、7分かけて高水準消毒を行います。
先端が細くて根元が太い採卵針を使用しています。
胚培養士が採取後の卵子から付着物を落として、37℃で管理されたインキュベーター(一定の温度に保つための装置で酸素濃度、二酸化炭素濃度、窒素濃度が厳密に管理されている)内で、体外受精や顕微授精まで前培養します。

セキュリティ・衛生管理を徹底した培養室業務

スタッフはエアシャワーを浴びて培養室に入ります。
患者様の凍結した卵子や精子、胚は二重に管理した厳重なセキュリティシステムでお預かりしています。

胚の選別・胚移植

体外受精・顕微授精を実施した後の卵子は、適切に温度管理されたインキュベーターの中に格納して培養します。
当院では、インキュベーターにカメラが内蔵されたタイムラプスシステムを設置しており、約10分おきに胚の状態を自動で撮影、いつでもチェックできます。
タイムラプスシステムに入れることにより、環境が一定のため良好な胚に到達できる確率が上がり、かつ胚についての得られる情報量が多くなり、どの胚を胚移植に使用するかの選別、長期培養(胚盤胞を目指す)の検討なども行いやすくなります。

黄体補充により妊娠をサポート

胚移植前から、ホルモン剤を投与し、妊娠しやすい状態をつくります。
黄体補充は、黄体から分泌されているプロゲステロン(黄体ホルモン)とエストロゲン(卵胞ホルモン)を補充します。
これらにより、着床しやすい子宮内膜の状態を整えることができます。
黄体補充の有効性を検証するために、妊娠判定日までに定期的に採血をします。

体外受精は患者様と協同のチーム医療

体外受精や顕微授精などの高度に人の手がかかった不妊治療のことをART(高度生殖補助医療)と言います。
ARTはよく、チーム医療だと言われますが、体外受精の成績を1%でも上げるために、患者様と医療機関が一体となった不妊治療を行う必要があります。

患者様サイドでは、卵子や精子は患者様自身の体から作られるため、いい体作りをする必要があると思います。
自分たちの生活を見直してみてください。
医療サイドでは、医師(先生)のみが良くても、素晴らしい体外受精の成績を上げることはできません。
医師、胚培養士、臨床検査技師(ホルモン測定)、看護師、メディカルアシスタント、受付、心理カウンセラー、鍼灸師などが一丸となって、体外受精の成績をあげるために、妥協しない絶え間ない努力をする必要があります。

また、「ARTは生き物」と言われるように、日々いろんな技術が開発され進化しています。
医療従事者は、国際学会に参加するなど、勉強をし続けなければなりません。

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