体外受精について知っておきたい基礎知識|受精方法の種類と流れ | 木場公園クリニック 不妊・不妊治療専門
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体外受精について知っておきたい
基礎知識|受精方法の種類と流れ

体外受精は、体外に卵子と精子を取り出して、卵子が入っている培養液の中に運動精子を入れて、
精子自身の力で受精させて、できた受精卵(胚)を子宮に戻す技術です。
1978年にイギリスで初めて成功して以来、世界中でこの技術を使用して、非常に多くの子供が生まれています。
体外受精が始められた頃は腹腔鏡を使用して卵子を体外に取り出していましたが、
現在では経膣の超音波下に日帰りで採卵をすることができるようになりました。
  1. 目次

  2. 体外受精の基礎知識

  3. 体外受精における受精方法の種類と特徴

  4. 体外受精のリスクと解消に向けた取り組み

  5. 20年前の体外受精と現在の体外受精を比較

体外受精の基礎知識

体外受精が開始された頃には、「試験管ベビー」などと呼ばれましたが、今や小学校の1クラスに2人は体外受精児の時代となり特殊な治療法ではなくなりました。

体外受精とは

体外受精とは、経腟超音波下に卵巣から採取した卵子を体外で精子と受精させて、2〜6日間体外で培養してできた胚を子宮に戻す不妊治療のことで、IVF (In Vitro Fertilization)とも呼ばれます。
体外受精のように高度に人の手がかかった生殖補助技術のことをART(Assisted Reproductive Technology)と言います。
人工授精とは排卵日に合わせて、精液を採取して、運動性が良好な精子を集めて、子宮に注入する方法です。
不妊治療を受ける人は、それぞれの状況に応じて、タイミング療法、人工授精、体外受精、顕微授精などを医師と相談して選択します。
精液中にある程度運動精子がいる場合には、人工授精と体外受精の妊娠率や費用などを比較して検討する患者様が多く見られます。

体外受精の流れ

STEP1:事前検査の実施

女性にも男性にも体外受精のスケジュールに入る前に必要な検査を実施します。 女性には、超音波検査、感染症検査、甲状腺機能検査、末梢血検査、血液型及び出血凝固系検査、ホルモン検査などを実施します。 超音波検査では、子宮筋腫、子宮内膜症、卵巣嚢腫、子宮奇形、卵管水腫の有無を検索します。 また、月経時に卵巣内に見える小さい卵胞(胞状卵胞)を数えて、卵巣の予備能力を判定します。 感染症検査では、梅毒、B型肝炎、C型肝炎、エイズ、将来白血病になるかもしれないウイルスの検査を行います。 甲状腺機能検査では、下垂体から分泌されている甲状腺刺激ホルモン(TSH)と甲状腺から分泌されている二種類の甲状腺ホルモン(freeT3,freeT4)の検査を行なっています。

甲状腺機能低下症が認められた時には、甲状腺ホルモンの補充を行います。 甲状腺機能亢進症を認めた時は、甲状腺治療の専門病院を紹介しています。 末梢血検査で、貧血はないか、赤血球数、白血球数、血小板数を調べます。 採卵は、腹腔鏡下ではなく経腟超音波下に実施することができるようになりましたが、小手術ですので、血液型や出血凝固系検査を行っています。

月経時のホルモン検査では、FSH,LH E2,プロラクチン検査を行っています。 一方、男性には、精液検査、精液培養、クルーガーテスト、SCSA、感染症検査、抗精子抗体検査を行います。 精液検査を実施して、ART直前の精液所見を確認して、体外受精、顕微授精、体外受精と顕微授精半々の判断をします。 精液培養を行って陽性の時は、治療を行います。

クルーガーテストとは、精子の形態を調べる検査ですが、その結果は体外受精の受精率とよく相関します。 SCSA(精子クロマチン構造検査)は、精子の頭の中の核の状態(精子クロマチンの欠陥やDNAの損傷など)を検出する方法です。 感染症検査では、梅毒、B型肝炎、C型肝炎、エイズ、将来白血病になるかもしれないウイルスの検査を行います。 血液中に抗精子抗体がないかを検査します。

事前検査は不妊治療を成功へ導く大切なポイント

STEP2:卵巣刺激(排卵誘発)

表のように卵巣刺激法には、高刺激法、中刺激法、低刺激法、自然周期法の4種類がありますが、患者さんの卵巣機能に応じた個別の卵巣刺激法の選択することが重要です。 卵巣機能が良好な方はどの卵巣刺激法でも選択できますが、卵巣の機能が悪い方は低刺激法または自然周期法しか選択することができません。

高刺激法には、ウルトラロング法、ロング法、ショート法、アンタゴニスト法などがあります。 排卵誘発剤を連日多めに使用して、多数の卵胞を発育させることによって、多くの卵子が採取可能となります。 しかし副作用として、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)になる可能性があります。

中刺激法は、フェマーラ(本来は乳がんの治療薬ですが、排卵誘発効果があり、クロミッドと違って子宮内膜が薄くなりません)と中等量の排卵誘発剤の注射(HMG製剤)を使用して、約3〜7個の卵子を取りに行きます。OHSSの可能性は低く、重度のOHSSになることはほとんどありません。

低刺激法は、クロミッドまたはフェマーラを月経3日目から5日間使用して、少量の排卵誘発剤の注射を一日毎に使用して、数個の卵子を採取します。

高刺激法に比べて採取できる卵子は少ないですが、卵巣過剰刺激症候群になることはほとんどありません。 自然周期法は、排卵誘発剤の注射や薬は使用しないで、ホルモンを測定、超音波検査で卵胞を測定して、卵胞の成長を待って、採卵する方法です。

排卵誘発剤を投与しないため、採取する卵子は原則1つですが、ごく小卵胞から採卵することもあります。

STEP3:採卵・採精

採卵は、手術室(採卵・胚移植室)で行います。
ご本人確認、アレルギーの有無などを確認した後に、心電図、血圧、パルスオキシメーター(動脈血酸素飽和度測定)を患者様に装着します。
採卵は、局所麻酔または静脈麻酔で行います。
外陰部と膣内を温めた生理食塩水で洗浄します。
経腟超音波プローブに卵胞穿刺用のガイドを装着して、膣から卵巣内の卵胞に採卵針を刺して、卵子が入っている卵胞液を吸引します。
経腟超音波プローブは採卵前に、7分かけて高水準消毒を行います。
採取後の卵子は付着物を落として、37℃で管理されたインキュベーター(一定の温度に保つための装置で酸素濃度、二酸化炭素濃度、窒素濃度が厳密に管理されている)で受精まで前培養します。

採精の流れ
採精室で精液を採取します。
仕事でクリニックに来院ができない時は、自宅で精液を採取して持参していただきます。
精液を十分に液化させた後、運動性のある良好な精子を回収します。

STEP4:受精

体外受精では、卵子が入っている培養液に、運動精子を添加します。
この操作のことを培精と呼びますが、簡単に精子のふりかけと言うこともあります。
体外受精では精子自身の力で受精をさせます。
ある程度以上の運動精子が回収できないと、体外受精では受精が成立しません。
一方、顕微授精では、ガラス製の針を使用して卵子の中に一匹の精子を注入して、
受精をさせます。
重度の男性不妊症の精子でも、卵子に受精をさせることができます。

STEP5:培養

体外受精や顕微授精を行った後、インキュベーター内で2から6日間培養を行います。
胚を培養する培養液には、前期培養用(前核期胚から8細胞期胚まで)と後期培養用(8細胞期胚から胚盤胞まで)の2種類の培養液を使用する逐次培養液(sequential medium)と前核期胚から胚盤胞まで同じ組成の1種類の培養液を使用するsingle mediumがあります。
どの時期まで胚を培養するのか、採卵した周期に胚移植を実施するか一度胚を凍結して別周期に子宮内膜を作成して融解胚移植を実施するか?

このポイントは体外受精や顕微授精の成績を決定する中で重要です。
2017年の日本産科婦人科学会のデータを見ると、体外受精または顕微授精などのARTで分娩した出生児の15.1%は新鮮胚移植児、84.9%は凍結融解胚移植児です。

選択した卵巣刺激法の種類、ホルモン値、子宮内膜の厚さなどを考慮しながら、採卵した周期に胚移植を実施するのか、胚を一度凍結して別周期に融解胚移植を実施するかを決定します。
また、胚盤胞まで培養するかについては、3日目の胚の状態を見ながら患者様と相談して決定します。

STEP6:胚移植

子宮腔内に胚を戻すことを胚移植と言います。
胚移植には、採卵した周期の新鮮胚(分割期胚または胚盤胞)を使用する場合と凍結融解した胚(分割期胚または胚盤胞)を使用する場合があります。
多胎妊娠を防ぐために、移植に使用する胚の個数は原則的には1個です。
診察室で患者様に胚の写真を見せて、胚の説明をします。
再度、手術室で患者様に、胚移植に使用する胚をモニターに映して確認していただいた後、胚培養士が胚移植用のカテーテルに胚を吸います。
胚移植用のカテーテルが胚培養士から医師に渡されて、医師は慎重に子宮を収縮させないようにそっと、カテーテルを子宮腔内に進めて、胚を子宮に戻し、妊娠へと導きます。

体外受精における受精方法の種類と特徴

体外受精(cIVF)

体外受精ではシャーレ内の卵子が入っている培養液中に、精液中から回収した運動精子を添加する(ふりかける)方法です。
運動精子が精子自身の力で卵子に侵入し、自然に受精させます。
メリットとしては、自然な状態で受精を促せるため、卵子や精子へのストレスが少ないとされています。

顕微授精(ICSI)

顕微授精とは、顕微鏡下に細いガラスの針を用いて卵子に一匹の精子を直接注入し、受精をさせる方法で、ICSIとも呼ばれます。 精子や卵子の状態により、体外受精では受精が成立しづらい場合などに行われます。 メリットとしては、精子数が非常に少ない高度乏精子症、精子の運動率が非常に低い重症精子無力症、精巣内にしか精子いない無精子症のような重症の男性不妊症の患者様でも、顕微授精により受精をさせることができます。 また、顕微授精では体外受精と違って、精子の選別が可能です。

顕微授精について詳しく知る

体外受精のリスクと解消に向けた取り組み

体外受精や顕微授精を実施する上で最も重要なことは、安全第一のシステムです。
また、1%でも妊娠率を高めるための継続した努力です。

体外受精で懸念されるリスク

体外受精や顕微授精で懸念されるリスクには、体外に取り出して受精させる際に、卵子や精子にかかるストレス、卵子を採取する際の膣、卵巣への影響、受精卵を培養する際の衛生面などがあります。
当院では、『安全第一』を最優先事項として、以下のような取り組みを行っています。

木場公園クリニックの取り組み

  • 妊娠しやすい体づくりのサポート

    栄養解析を行って、体に足りていない栄養素を特定して、個別のサプリメント療法を行っています。
    また、子宮や卵巣の血流改善の目的で、低反応レーザー療法も実施しています。

  • 最新技術による超音波検査

    基本検査で実施する超音波検査では、GEヘルスケアジャパン社の3D観察も可能な解像度の高い超音波断層装置(Voluson S8)を採用しています。
    また、採卵にはGEヘルスケアジャパン社の解像度の高い超音波断層装置(Voluson P8)を使用しています。
    採卵用のプローブは採卵直前に、1本1本丁寧に7分かけて高水準消毒を行っています。

  • 良好精子選別後顕微授精(IMSI)

    ICSIが始められた当初は、精子の運動性におもに注目して精子を選別していました。
    精子のサイズは胚や卵と比べて20分の1しかないにもかかわらず、ICSIにおける精子は、卵や胚を通常観察する際に用いる400倍率の倒立顕微鏡下で、観察・評価・選別しています。
    精子を詳細に観察して選別するために、ICSIに用いる倒立顕微鏡の観察倍率を上昇させて、解像度を高めることで、より細かく精子の形態(特に精子頭部における空胞の有無)を観察しながら良い精子を選別し、それを顕微授精に用いるのがIMSI(Intracytoplasmic Morphologically selected Sperm Injection) 形態良好精子選別後顕微授精です。

  • リアルタイムでのデータ記録

    木場公園クリニックでは、リアルタイムで直接コンピューターにデータ入力を行い、すべてのフロアで入力されたデータは有線でPCに接続されており、常にそれを確認できます。

  • 完全無停電の電力供給システム

    通常電源停電時もUPSと組み合わせているため瞬時も電源が停止せずかつ防災用とは異なり電算機電源にも利用できる精密な波形精度の発電機でバックアップしています。
    無停電となるものは、インキュベーター、高性能エアコン、冷蔵庫などです。

  • タイムラプスシステムで培養の経過を観察

    タイムラプスとは、一定間隔で胚を撮影して、その写真を連続で映し出すことで動画のように見ることができる技術です。
    従来は胚の観察は、その都度培養器(インキュベーター)から胚を取り出して顕微鏡下で行われていました。
    当院が採用しているEmbryoScope+(タイムラプスシステム)では、培養器の中にカメラが内蔵されているため、胚を外に取り出さなくても10分毎に器械が胚を撮影してデータが蓄積されます。
    タイムラプスシステムでは得られる胚の情報量が多くなるだけではなく、大事な胚への外的ダメージを大幅に軽減させ、胚を培養する環境が一定となるため、良好な胚盤胞が得られる確率が増加します。
    当院のデータでは、胚盤胞到達率は従来のインキュベーターでは48.8%、EmbryoScope+では60.0%と、EmbryoScope+で胚盤胞到達率が高い結果でした。
    また、当院では患者さまにPCのモニター上でタイムラプス動画をお見せしながら、胚の説明をしています。

20年前の体外受精と現在の体外受精を比較して

女性不妊症と男性不妊症を一人の医師が診療できるコンセプトのもとに、
平成11年1月11日に江東区の木場公園の近くに開業して早いもので21年が経過しました。

ART(高度生殖医療)は生き物とよく言われますが、この21年間で、かなりの変革があったと感じます。
開業当時は2日目や3日目の初期胚移植が主流でしたが、培養液が進化し胚盤胞到達率が高くなったため、5日目や6日目の胚盤胞まで培養することが多くなりました。
また、胚凍結の方法も当時はプログラムフリーザーを使用した緩慢凍結法を行なっていましたが、現在は超急速ガラス化法が主流となりました。
これに伴って胚盤胞を採卵周期には胚移植しないで、一度凍結をしてから融解胚移植を実施することが多くなりました。
胚はインキュベーター(培養器)で培養され、胚を観察するときは培養器から外に出して顕微鏡で観察していましたが、現在ではカメラ付きの培養器(タイムラプスシステム)が開発され、器械が10分毎に胚を自動で観察するため、観察するために胚を培養器から外に出さなくて良くなりました。
このタイムラプスシステムを採用することにより、胚の観察から得られる情報量が多くなりかつ胚盤胞到達率も高くなりました。

開業初年度は40代の方の採卵に占める割合は約10%でしたが、現在では約50%となりました。
これに伴って、レーザー療法など統合的に患者様にアプローチをする必要が出てきました。
卵子や精子は、自分の体から作られるため、不妊治療において良い体づくりは必須です。
食事、睡眠、運動などの生活習慣の見直しや栄養解析を実施した個別のサプリメント療法を行っています。
着床障害の方に対する検査として、ERA検査、EMMA+ALICE検査、Th1/Th2検査を行なっています。
ERA検査(子宮内膜着床能検査)は着床できる時期にずれがないかを調べる検査です。最適な着床時期±30分で融解胚移植を行っています。

EMMA+ALICE検査は、子宮内細菌叢検査(子宮内フローラ検査)と慢性子宮内膜炎の原因菌検査です。子宮内の細菌は乳酸桿菌が90%以上を占め、乳酸桿菌がグリコーゲンを材料に乳酸を産生して、子宮内の弱酸性を保っています。
慢性子宮内膜炎の原因菌が検出されたときには、抗菌剤や抗生物質で治療後に、乳酸菌の膣錠を使用して融解胚移植を行います。

慢性子宮内膜炎の原因菌は検出されず乳酸桿菌の割合が低いときには、乳酸菌の膣錠のみ使用して融解胚移植を行います。
免疫系の司令塔の細胞にヘルパーT細胞があり、ヘルパーT細胞には1型(Th1)と2型(Th2)があります。Th1の値が高いと妊娠を攻撃することがあります。そのような体質の方には、免疫抑制剤のプログラフ(タクロリムス)を使用します。
今後も、世界トップレベルの施設を目指し、常に進化し続ける木場公園クリニックを目指します。

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木場公園クリニックは体外受精・顕微授精に特化したクリニックです。
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