体外受精後の着床に
ついて|着床障害が起こる原因と対処法

不妊症の治療には、人工授精まで含めた一般不妊治療と体外受精や顕微授精(ICSI)などの生殖補助技術があります。
体外受精や顕微授精(ICSI)では一般不妊治療と比べて、来院の回数が多くなります。
体外受精や顕微授精(ICSI)などの不妊治療では、卵巣から取り出した卵子と精子を受精させ、
できた受精卵(胚)を培養して、初期胚または胚盤胞で子宮腔内に戻します。
受精卵(胚)は受精後7日目に子宮内膜に着床します。
受精卵(胚)を繰り返して子宮内に移植しても、着床しないことを着床障害と言います。
着床のメカニズムは非常に複雑で、着床障害には、胚側と母体側の原因があります。
胚側は、胚の染色体異常が原因であることが多く、現在は、胚の染色体異常を治す治療法はありません。
母体側の原因には、子宮の病気、子宮内の乳酸桿菌不足、慢性子宮内膜炎、子宮内膜の着床時期がずれている、
卵管の病気、ホルモン異常、抗リン脂質抗体症候群、免疫異常などがあります。
  1. 目次

  2. 体外受精における着床について

  3. 受精卵が着床されない着床障害とは

  4. TRIO検査とは

  5. 「着床障害の免疫抑制剤による治療」

体外受精における着床について

体外受精や顕微授精では、採取した卵子と精子を受精させ、できた受精卵(胚)を、初期胚または胚盤胞で子宮腔内に戻します。
受精卵(胚)は受精後7日目に子宮内膜に着床します。

着床とは

着床とは、受精卵が子宮内膜に接着することです。
胎盤がつくられて、胚と母体がつながることで、酸素や栄養分が胚におくられるようになります。

胚移植後の着床までの流れ

排卵の前の卵巣内の卵胞(卵子が入っている袋)から卵子を採取することを採卵と言います。
採卵は経腟超音波下で実施しますが、麻酔は局所麻酔または静脈麻酔を行います。
体外受精では、経腟超音波下で採取した卵子を精液中の運動精子自身の力で、受精を成立させます。
一方、顕微授精ではガラス製の針を使用して、卵子内に精子を注入して受精卵を作ります。
体外受精や顕微授精でできた受精卵(胚)を、初期胚または胚盤胞で子宮腔内に戻します。
初期胚と比べると胚盤胞の状態で胚移植すると着床率が高くなります。
また、体外受精や顕微授精では、着床率を高めるために、黄体ホルモンの補充を行います。
着床は、受精後7日目に、まず胚が子宮内膜に接着することによっておこります。
胚は子宮内膜に接着すると、内膜に潜り込んでいきます。
胚から分泌される酵素により、子宮内膜の細胞を分解し、胚が内側へ入っていきます。
細胞の層の中で腔ができます。
腔とは胎内の空洞のことで、腔の中に母体の血液が入ることで、胚が育っていきます。
血液が入った腔は胎盤になります。

受精卵が着床されない着床障害とは

着床は、透明帯で覆われている胚盤胞の中身が透明帯の外に脱出して、子宮内膜に接着することによりおきます。
受精卵を繰り返して子宮内に移植しても、着床しないことを着床障害と言います。
着床障害には、胚側と母体側の原因があります。

着床障害とは

体外受精や顕微授精でできた受精卵(胚)を繰り返して子宮内に移植しても、着床しないことを着床障害と言います。
形態が良好な胚を移植しても着床しない時もあります。

着床障害が起こる胚側の原因

着床のメカニズムは非常に複雑ですが、着床障害には、胚側と母体側の原因があります。
胚側は、染色体異常が原因であることが多く、現在は、胚の染色体異常を治す治療法はありません。
しかし、希望があれば胚の染色体異常の有無を調べることは可能で、正常な染色体を持つ胚を移植する方法を取ることはできます。
この方法のことを着床前胚染色体異数性検査(PGT-A)と言います。
当院は、日本産科婦人科学会から、「反復体外受精・胚移植(ART)不成功例、習慣流産例(反復流産を含む)、染色体構造異常例を対象とした着床前胚染色体異数性検査(PGT-A)の有用性に関する多施設共同研究」の研究分担施設として承認を受けています。
また、解析実施施設としての承認も受けています。
精子の質と卵子の質が合体したものが、胚の質のため、食事や生活の環境などにも影響を受けます。

着床障害が起こる母体側の原因

子宮の病気 子宮筋腫、子宮内膜ポリープ、子宮腺筋症、子宮形態異常(子宮奇形)、子宮内腔癒着(流産手術後など)があるときは、手術療法が必要となります。
子宮内の乳酸桿菌不足 検査を行って乳酸桿菌が子宮内に不足している時は、月経の出血が終ったら、膣内に乳酸菌を補充します。
慢性子宮内膜炎 抗生物質による治療を行います。
子宮内膜の着床時期がずれている 子宮内膜着床能検査(ERA)を行って、着床に最適な時期に胚移植を行います。
子宮内膜着床能検査(ERA)、子宮内の乳酸桿菌の割合の検査、慢性子宮内膜炎の3個の検査をまとめて、ERAテストの当日に一度の来院で行なう検査がTRIO検査です。
TRIO検査については次の見出しで取り上げます。
卵管の病気 クラミジア感染症などで、卵管水腫(卵管が腫れている)ときは、卵管水腫の内容液が子宮腔内に流入して着床障害をおこすことがあるため、着床障害がある場合は手術療法を行います。
両側に卵管水腫があるときは、採卵して胚を凍結しておいて、卵管水腫の手術をしてから胚移植した方が、着床率の可能性が高くなるとの報告があります。
ホルモン異常 ホルモン検査を行って、甲状腺機能異常または高プロラクチン血症があるときは、ホルモン療法を行います。
抗リン脂質抗体症候群 低用量アスピリンとヘパリンによる抗凝固療法を行います。
免疫異常 免疫的に妊娠を攻撃しやすい体質の人には、免疫抑制剤による治療を行います。
免疫異常については別の見出しで取り上げます。

TRIO検査とは

ERA(子宮内膜着床能検査)、EMMA(子宮内膜マイクロバイオーム検査)、ALICE(感染性慢性子宮内膜炎検査)の3個の検査をまとめて実施する検査をTRIO検査と呼びます。

子宮内膜着床能検査(ERA)とは

子宮内膜の着床の窓(胚が子宮に着床できる時期)がずれていないかどうかを調べる検査です。
子宮内膜は、常に着床の準備がされているわけではありません。
着床の準備が整っていないときに胚移植をすると、たとえ良好な胚でも着床しません。
通常推奨される時期に良好な胚を数回移植しても着床が起きない場合に、検査を実施します。
また、女性の年齢が高齢の場合では、凍結している胚盤胞を最大限に着床させるために、検査を行います。
ERA検査のメリット 個人の着床の窓を特定、最適な移植のタイミングがわかります。
胚移植での妊娠率が約25%向上します。
最新の技術で遺伝子の発現パターンを解析します。
ERA検査の方法は? 通常の移植のタイミングで子宮内膜を採取します。
木場公園クリニックでは、ホルモン補充周期のときは、プロゲステロン投与後120時間後、正確に子宮内膜を採取しています。
子宮腔内に細いカテーテルを挿入し、少量の子宮内膜を採取して、子宮内膜の着床に関連している遺伝子の発現レベルを分析します。
検査結果から、受容前期、受容期、受容後期の別が判定されます。
結果に応じて、移植時期を変更します。

EMMA(子宮内膜マイクロバイオーム検査)とは

子宮内の細菌の割合を調べて、ラクトバチルス(乳酸桿菌)が90%以上あるかを調べる検査です。
子宮内には通常は、ラクトバチルス(乳酸桿菌)が90%以上いて、グリコーゲンを材料として乳酸を作って、子宮内を弱酸性にしています。
ラクトバチルス(乳酸桿菌)が90%未満の時には、乳酸菌の膣錠を使用します。

ALICE(感染性慢性子宮内膜炎検査)とは

子宮内に慢性子宮内膜炎の原因菌がいるかどうかを調べる検査です。
病原菌が検出されたときは、抗菌剤による治療を行います。

「着床障害の免疫抑制剤による治療」

妊娠を攻撃しやすい免疫体質があるときには、免疫抑制薬による治療を行います。
妊娠は自分(Self)の遺伝情報が半分、男性の遺伝情報(Non-self)が半分で出来ているため、免疫学的に見ると異物と言えます。
しかし、妊娠中は免疫学的寛容が働いて(免疫が見て見ぬ振りをしてくれて)妊娠している部分は女性の体から攻撃されないように守られています。

リンパ球には免疫系の細胞達に指令を出すヘルパーT細胞があります。
エイズではこのヘルパーT細胞が機能しなくなるため、免疫系がズタズタにされます。
ヘルパーT細胞には1型のヘルパーT細胞(Th1)と2型のヘルパーT細胞(Th2)があります。
この二種類のヘルパーT細胞によって免疫バランスが保たれています。

Th1値が高く、Th2値が低い人では、着床障害や妊娠しても妊娠している部分が女性の体から攻撃を受けることがあります。
このような方には免疫抑制剤のプログラフが有効とされています。
全く妊娠判定が陽性にならない着床障害の方は、胚移植日からプログラフを使用します。
妊娠判定がくっきり陽性になるが流産を繰り返す反復流産の方は、妊娠3週5日(胚盤胞移植の時は胚移植後1週間後)で妊娠判定をして、陽性ならその日からプログラフを開始します。
プログラフはTh1/Th2比が、15.5から19では1日1錠、19から22.5では1日2錠、22.5以上では1日3錠使用します。
また、Th1値が29以上の時は1錠追加します。
分娩日前日まで使用が有効とされています。

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木場公園クリニックは体外受精・顕微授精に特化したクリニックです。
少しでも安心して不妊治療を受けていただけるよう、
様々なトータルソリューションをご提案・ご提供いたします。

海外・国内の学会参加による
世界レベルの最先端の治療を追及

開院以来20年にわたり診療で蓄積された診療経験や検査・治療の結果、症例をもとに、
より良い不妊治療の成果を出すために、日々行っている研究や検討を紹介しています。

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着床前胚染色体異数性検査
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