体外受精の保険適用―治療への適用範囲や条件、活用時の注意点
公的医療保険(健康保険)が適用されています。
患者さんが負担するのは、かかった医療費の原則3割。
子どもを持ちたい希望があっても、経済的な面から悩み、
クリニックへの受診や体外受精へのステップアップをためらっていたご夫婦にとって、
治療開始のハードルはぐんと低くなりました。
体外受精や顕微授精が保険適用に
2022年4月から、「人工授精」、生殖補助医療である「体外受精」「顕微授精」、男性不妊の治療として行われる「精巣内精子回収法」など、日本生殖医学会のガイドラインによって、安全性、有効性が確認された基本的な治療すべてが保険診療の対象となっています。
保険適用される不妊治療
*一般不妊治療 |
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・タイミング法 ・人工授精(AIH) |
*生殖補助医療(ART) |
・採卵 ・採精 ・体外受精(IVF) ・顕微授精(ICSI) ・受精卵・胚培養 ・胚凍結保存 ・胚移植 |
体外受精と顕微授精のどちらを選択するかは、精子の状況や過去の体外受精で受精障害があったかなどにより判断します。
当院では、保険適用開始以来、医療レベルを保ちつつ、可能な限り保険診療を優先して行っており、現在は生殖補助医療のほぼ8割が保険診療です。
保険診療が始まった当初、これまでの自由診療に比べて、使える薬剤や検査の回数などに一部制限があるので、体外受精の成績に影響があるのではと懸念する声もありましたが、助成金を使用して自費診療を行なっていた時代と、保険診療を開始してからの2年間で、成功率に差はありません。
保険適用によって体外受精の費用はどのように変わった?
より多くの卵子を育てるための卵巣刺激に使用する排卵誘発剤の量や種類は、患者さんの卵巣機能により違うので、一概には言えませんが、卵胞チェックの超音波やホルモン検査費、薬剤費、再診料などは通院のつど必要で、1周期で約2~3万円かかります。
また、採卵できた卵子の個数、受精によってできた胚の培養費、凍結胚の保存管理費などは、個数が多くなると、それだけ多くの料金がかかることになります。
体外受精か顕微授精か、より妊娠の確率が高いとされる「胚盤胞」まで培養するか、採卵周期に移植を行う新鮮胚移植か、凍結した胚を次周期以降に融解して移植するかなど、個々の患者さんの治療内容により、トータルの金額は違ってきますが、おおむね15~20万円程度。従来は50~100万円かかるケースもあったので、経済的負担はかなり軽減されたといえます。
木場公園クリニックでの保険適用の料金はこちらを参照ください。
体外受精が保険適用となる条件
生殖補助医療である体外受精、顕微授精を保険で行う場合には、適用条件が定められていて、それを満たす必要があります。
カップルの関係
法的な婚姻関係、または事実婚であることが必須です。法律婚では戸籍などの確認、事実婚カップルでは、「2人がそれぞれ重婚でない」「同一世帯である(ない場合はその理由)」「治療の結果出生した子どもを認知する」などの申告が求められます。また、治療開始時には治療計画の作成が義務づけられていて、治療はその計画に従って進められます。そのため、受診の初回には原則としてカップル2人で来院し、説明を受け、同意することが必要です。
年齢
治療計画の作成日時点で、女性が43歳未満であること。男性の年齢制限はありません。回数
保険で受けられる体外受精、顕微授精は、女性が40歳未満の場合は最大6回まで、女性が40歳~43歳未満の場合は最大3回までです。この回数は、胚移植を行った回数でカウントされ、採卵の回数は関係ありません。また1子あたりの回数なので、次子以降の治療の際はリセットされます。
なお、一般不妊治療の人工授精では、年齢や回数の制限はありません。
体外受精が保険適用になったことのメリット
医療費の3割負担で治療が受けられることで、経済的に余裕のない若い世代でも、早い時期から受診や治療を開始できるので、それだけ妊娠の可能性も高まります。
また、それぞれの治療段階でかかる費用が明確になったのも、メリットの1つです。
保険適用以前、費用の一部を助成する「特定治療支援事業」がありましたが、いったん窓口で治療費全額を支払い、助成金の支給は後日になるので、一時的な負担も大きかったのです。
また公的医療保険の対象となったので、「高額療養費制度」が利用できます。これは1か月に支払う医療費が上限を超えた場合に、超えた額を支給する制度で、上限額は世帯の年齢や所得によって異なります。くわしくはご自分が加入している保険組合や、国民健康保険の場合は自治体に確認しましょう。
体外受精の保険適用を活用する際の注意点
保険適用の治療で得られた胚をすべて移植し終えるまで、次の治療周期に進めない
保険診療で採卵、受精を行って、複数の胚(受精卵)ができ、凍結保存した場合には、その凍結胚をすべて移植し終えるまで、保険を使って次の治療周期に進むことはできません。ただし、次子以降にこの凍結保存した胚(余剰胚)を利用する時は、保険で融解胚移植を受けることができます。
なお、採卵の回数には制限がないので、胚が得られるまで何度でも保険で採卵を行うことができます。
保険診療と自費診療を同じ周期に行うことはできない
保険診療と、保険のきかない自費診療を同時に行うことを「混合診療」と言いますが、不妊治療では混合診療は認められていません。一連の治療の流れの中で、1つでも自費診療の項目があると、その周期の治療は、通常なら保険が適用されるものも含めて、すべてが自費となってしまいます。「先進医療」は保険診療と併用できる
現在は保険適用ではないため、費用自体は自費負担になりますが、保険診療と併用できるオプションの検査や治療が「先進医療」です。どんな先進医療を行っているかはクリニックごとに異なり、その金額も施設がそれぞれに定めています。
木場公園クリニックで実施している先進医療
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タイムラプス
顕微鏡のついたカメラを内蔵し、24時間一定時間ごとに連続して撮影ができる培養器。胚を取り出すことなく観察ができ、従来ではわからなかった分割の様子がよりくわしくモニターできる。
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ERA(エラ)
子宮内膜が胚を受け入れるのに適した時期かどうか、胚移植に最適のタイミングを調べる検査。
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EMMA・ALICE(エマ・アリス)
EMMAは子宮内の乳酸桿菌(ラクトバチルス)の割合を、ALICEは慢性子宮内膜炎の原因菌の有無などを調べる検査。ラクトバチルスが少ないと着床などに影響し、不妊治療の成績が下がるといわれている。
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IMSI(イムジー)
顕微授精の際に、超高倍率の顕微鏡で精子の形態を観察し、良好な精子を選別する技術。
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PICSI(ピクシー)
顕微授精の際に、ヒアルロン酸を含む培養液を用いて、成熟した精子を選別する技術。
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SEET(シート法)
受精卵を胚盤胞まで培養し凍結する際に、培養液も別途凍結保存し、移植周期にまず培養液を注入し、その後に胚盤胞を移植する方法。
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二段階胚移植
受精後2~3日目の初期胚をまず1個移植し、受精後5日目まで培養をつづけて育った胚盤胞をさらに1個移植する方法。最初の移植で子宮内膜が着床しやすい環境になることを期待するもの。
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子宮内膜スクラッチ
着床前にわざと子宮内膜に小さな傷をつける方法。傷の修復過程で分泌されるサイトカインにより、着床しやすい子宮環境にする目的で行われる。
そもそも保険診療ができない治療もある
「免疫性不妊症」または「免疫性不育症」では、保険で認められていない免疫抑制剤を使用しなければ妊娠が望めないため、自費診療となります。また、凍結融解胚移植の際に、ホルモンを補充しても、子宮内膜が非常に薄く、PRP療法(患者さん自身の血液から抽出した高濃度の血小板を子宮腔内に注入する方法)が必要な場合も、保険適用外です。
保険適用の体外受精では結果が出ない時はどうする?
通常の保険診療を行っても妊娠が成立しない時には、先進医療を併用
当院ではタイムラプスはほぼ全例で行っており、顕微授精の成績が悪い時は、IMSIやPICSIを行ないます。また、2回胚移植を行なっても着床しないケースでは、ERA、EMMA、ALICE検査を実施し、SEET法や二段階胚移植も行います。PGT-A(着床前胚染色体異数性検査)を受ける
移植前に胚の細胞の一部を採取して、その染色体の数を調べるのが「PGT-A」です。染色体の数に異常がある胚は着床しづらく、また流産の確率が高いため、問題のない胚を選んで移植する目的で行われます。現時点では保険適用外のため、この検査を受ける周期の治療すべてが自費となってしまうデメリットがありますが、受けたほうがよいケースは多数あります。2回良好胚を移植しても妊娠しない、あるいは2回以上の流死産の経験がある、特に40歳前後のかたには、意味のある検査だと思います。保険での回数上限を超えても治療継続の希望があるかたには積極的にお勧めします。
受付・診療時間
時間/曜日 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 |
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午前
午前8:30-12:00
午後
午後13:30-16:30 |
吉田 関本 巷岡 西川 杉山 | 吉田 関本 巷岡 西川 | 巷岡 西川 | 吉田 関本 巷岡 西川 米澤 | 関本 西川 | 吉田 関本 杉山 岩原 松浦 |
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