【心理カウンセラー解説】不妊治療中の心のストレスと夫婦の向き合い方
更新日時:2025.12.10
1.不妊治療中に気になる心理的ストレスについて
治療にチャレンジしてもなかなか思うように結果が出ないとき、治療中に結果を待っているとき、通院をストレスに感じてしまうとき…、この心理的負担がそもそも不妊の原因なのではと考えてしまうこともあるでしょう。
「リラックスしたらできるよ」「不妊治療をやめたら授かった人がいる」などという周囲からの真偽不明の言葉が追い打ちをかけることもあるかもしれません。
1-1. 心と体の関係は
では、妊娠、出産についてはどうでしょうか。今のところ、心理的ストレスが不妊の第一要因となりうるというはっきりとした研究結果は示されていません(わたしが知る限り)。つまり、心理的ストレのみが不妊を引き起こすことはないということです。
1-2. 不妊治療中のストレス
1-3. 不妊治療中に落ち込むのは当たり前と知る
どうしても気持ちがふさいでしまうとき、前向きに考えられないとき、そんなときは、「いま、それだけ大変な治療に取り組んでいるのだ」とまずは自分を褒めてあげましょう。そして感情の起伏が激しくなったり後ろ向きになるのは当たり前、と少し開き直ってみてほしいと思います。「前向きにならなければ」「落ち込まないで気持ちを切り替えなくてはいけない」と考えることは、自分に無理を強いていることになるので、心に負担をかけることになります。心が最も負担を感じやすく、ストレスがかかるのは、「無理をする」ときではないかと思います。自然な感情を「押さえ込む」ことには特に大きな負担がかかります。このことがいちばんのストレスになっているとしたら、無理をするのはやめた方がいいとは思いませんか。
1-4. これからの人生を考えよう
落ち込むのは当たり前、無理をしないこと、そしてこの苦しさは今だけだと知り、何よりも自分を大切に、もっと甘やかしてみてください。
1-5. 心身の健康について
心身の健康は不妊治療に関わらず、人生を意欲的に生きていくために不可欠なものです。心と体の負担は、できれば減らしたほうがいいでしょう。ただ、リラックスは「しなければいけない」と思って義務的にできるものではありません。そのため、ここでも無理は禁物です。少しだけ余裕のあるときには、自分の好きなものを思い出したり、スマホで美しい景色の画像を眺めてみたりしてください。そして、心身の健康のためには「ほっと一息つける時間や場所」が必要です。できる範囲で、気が向いたらで大丈夫です。ハーブティーを飲むのもおすすめです。一日一分ほっと一息つければ十分!毎日続けられたら一週間で七分間も安心を感じられたことになります!こんなほんの少しずつの積み重ねで良いのです。栄養バランスの良い食生活、ヨガやウォーキングなどの適度な運動は大きな理想です。辿り着けるまでには時間がかかるかもしれませんが、余裕のあるときに少しの積み重ね、スモールステップから始めてみましょう。
2.不妊治療中の夫婦間の温度差について
2-1. よく聞く声
「話を聞いてくれない。結論を急ぐ」
「気持ちを十分にはわかってくれない」
「夫に不妊原因があるので気をつかってしまう」
「治療に興味がないようだ」
男性が妻について
「治療ですごく落ち込んでいるのでどう励ましたらいいかわからなくて困る」
「ストレスが多い治療なので辞めた方が妻のためになるのかと迷う」
「負担がかかるのは女性なので無理強いはできない」
「治療のことはわからないので妻に任せた方がいいと思う」
不妊治療に積極的でよく奥さまの話を聞いてくれる旦那さまであっても、「男女の感じ方の違い」から、女性は特に孤独を感じやすいかもしれません。
実際に治療で負担を強いられるのは女性です。通院や痛みの負担のほとんどは女性が引き受けなくてはならない現実があります。妊娠出産にいたってもそうです。近年は変化してきたとはいえ、子育ても女性に特に負担が多いものであることも否めません。加えて、妊娠出産には生物学的な適齢期が存在するため、加齢に対し敏感になり、切実感を覚えやすいのも特に女性の方だと思います。
2-2. 男女の違いを理解する
2-3. 治療中の旦那さまへ
加えて、不安や心配、または不満のようないわゆる「愚痴」のような話が出てきたら、一度は否定せずに受け止めてみてほしいのです。なんとなく共感できそうなことには「そうだね」、ちょっと否定したくなるようなことだったら「そうかな〜」でまずは返します。
奥さまが「どうしたらいいと思う?」「あなたの考えは?」などと聞いてくるまでは、解決法やアドバイスは我慢です!そして、奥さまの言っていることが「正しいか正しくないか」で考えないようにしてみてください。「こんなふうに感じてるのかな〜」でいいのです。落ち込んだり悲しんだりしているときには、まずはその気持ちを受け止めてみてください。「落ち込んでるんだね」「不安になるほど大変なんだ」です。励ましはそのあとでも遅くはありません。
また、不妊治療の選択決断を奥さまだけに任せないでください。もちろん、負担を強いられる女性が最終的には決断を下すというのは間違ってはいませんが、一緒に悩み考え、そして夫としての考えもきちんと伝えてほしいと思います。
2-4. 治療中の奥さまへ
加えて、男性の「解決志向的」考え方についても理解を示してみてください。「とりあえず話を聞いて」「アドバイスは後で聞くから」「治療を辞めたいわけではない」などと前もって伝えてから話を聞いてもらうのもいいかもしれません。つい一方的に不満を募らせがちですが、伝える努力もときには必要です。
最後に
執筆者
中島美佐子 木場公園クリニック 心理カウンセラー
資格) 臨床心理士 公認心理師 生殖心理カウンセラー
受付・診療時間
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