【心理カウンセラー解説】不妊治療中の心のストレスと夫婦の向き合い方 | 木場公園クリニック-JISART認定 体外受精・顕微授精
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【心理カウンセラー解説】不妊治療中の心のストレスと夫婦の向き合い方

更新日時:2025.12.10
  1. 目次

  2. 1.不妊治療中に気になる心理的ストレスについて

  3.  1-1. 心と体の関係

  4.  1-2. 不妊治療中のストレス

  5.  1-3. 不妊治療中に落ち込むのは当たり前と知る

  6.  1-4. これからの人生を考えよう

  7.  1-5. 心身の健康について

  8. 2.不妊治療中の夫婦間の温度差について

  9.  2-1. よく聞く声

  10.  2-2. 男女の違いを理解する

  11.  2-3. 治療中の旦那さまへ

  12.  2-4. 治療中の奥さまへ

  13. 最後に

1.不妊治療中に気になる心理的ストレスについて

不妊治療中に、「心理的なストレスってどれくらい妊娠に影響しているの?」と疑問に感じたことはありませんか。
治療にチャレンジしてもなかなか思うように結果が出ないとき、治療中に結果を待っているとき、通院をストレスに感じてしまうとき…、この心理的負担がそもそも不妊の原因なのではと考えてしまうこともあるでしょう。
「リラックスしたらできるよ」「不妊治療をやめたら授かった人がいる」などという周囲からの真偽不明の言葉が追い打ちをかけることもあるかもしれません。

1-1. 心と体の関係は

わたしたちは、「過度な心理的ストレスは体に良くない」と、漠然と感じていると思います。幼少期に多くの逆境体験(虐待、親の病気や死亡など)を経験した人は、寿命が縮まり癌などの疾患にもかかりやすいことが近年の研究でわかってきています。これは、過度なストレスである逆境体験が身体的健康にも大きく影響を及ぼすことを示しています。
では、妊娠、出産についてはどうでしょうか。今のところ、心理的ストレスが不妊の第一要因となりうるというはっきりとした研究結果は示されていません(わたしが知る限り)。つまり、心理的ストレのみが不妊を引き起こすことはないということです。

1-2. 不妊治療中のストレス

不妊治療は、治療中の患者さんご自身が考えている以上に、心身に負担のかかる医療だといえます。複数回の通院、検査や注射や採卵などでの痛み、スケジュール管理、お金や時間をかけても望む結果が出るとは限らず先が見えにくい、選択した治療がベストなのか判断が難しい、治療と仕事の両立、年齢という時間制限、夫婦での治療のため考え方や感じ方が違い悩むことがある、結果が出ないことへの落胆、流産…、などなど他の病気治療と異なる部分も多く、その分負担も大きくなっていると考えられます。周囲が当たり前のようにしている妊娠出産が思うようにできない、このことだけでもすでに大きな心理的負担となりえます。

1-3. 不妊治療中に落ち込むのは当たり前と知る

まず、「治療中に落ち込んだり気持ちが不安定になるのは自然なことだ」と知ってください。治療に取りかかるまでにもたくさん悩んだかもしれません。お金も時間もかけて治療を頑張ったのに思うように結果が出ないとき、落胆し悲しくなるのは当然です。気持ちが沈み不安になり、ついネガティブに考えてしまうこともあるでしょう。でも、落ち込んでしまうことまでも「ストレスだからやめなさい」と言われたらどうでしょうか。二重に苦しむことになってしまうと思いませんか。
どうしても気持ちがふさいでしまうとき、前向きに考えられないとき、そんなときは、「いま、それだけ大変な治療に取り組んでいるのだ」とまずは自分を褒めてあげましょう。そして感情の起伏が激しくなったり後ろ向きになるのは当たり前、と少し開き直ってみてほしいと思います。「前向きにならなければ」「落ち込まないで気持ちを切り替えなくてはいけない」と考えることは、自分に無理を強いていることになるので、心に負担をかけることになります。心が最も負担を感じやすく、ストレスがかかるのは、「無理をする」ときではないかと思います。自然な感情を「押さえ込む」ことには特に大きな負担がかかります。このことがいちばんのストレスになっているとしたら、無理をするのはやめた方がいいとは思いませんか。

1-4. これからの人生を考えよう

不妊治療中の人は、多かれ少なかれ似たような心理的負担を抱えているものです。多くの人が悩んだり落ち込んだりしています。あなたは一人ではありません。そして、今は人生の中でもいちばん大変な時期の一つなのだ、と気づいてみてください。不妊治療は今後の人生にとって一つの岐路となる大切なものです。どのような未来が待っているかはわかりません。でも、今抱えている苦しみがこの先もずっと同じように続くわけではないと思います。必ず終わりはくるのです。5年後、10年後、20年後を考えてみてください。今とは違う悩みはあるかもしれませんが、今までの人生でそうしてきたように、今現在抱えている苦しみは、乗り越えたり折り合いをつけたりしている自分が待っているのではないかと思います。どんな結果になっていても、きっと人生を豊かに生きている自分が未来にはいるのだと、自分に自信をもってみてください。
落ち込むのは当たり前、無理をしないこと、そしてこの苦しさは今だけだと知り、何よりも自分を大切に、もっと甘やかしてみてください。

1-5. 心身の健康について

妊娠のために健康な体を維持することはとても重要で、心の健康も欠かせません。ですが、そのために苦しみを増やしてしまっては本末転倒です。
心身の健康は不妊治療に関わらず、人生を意欲的に生きていくために不可欠なものです。心と体の負担は、できれば減らしたほうがいいでしょう。ただ、リラックスは「しなければいけない」と思って義務的にできるものではありません。そのため、ここでも無理は禁物です。少しだけ余裕のあるときには、自分の好きなものを思い出したり、スマホで美しい景色の画像を眺めてみたりしてください。そして、心身の健康のためには「ほっと一息つける時間や場所」が必要です。できる範囲で、気が向いたらで大丈夫です。ハーブティーを飲むのもおすすめです。一日一分ほっと一息つければ十分!毎日続けられたら一週間で七分間も安心を感じられたことになります!こんなほんの少しずつの積み重ねで良いのです。栄養バランスの良い食生活、ヨガやウォーキングなどの適度な運動は大きな理想です。辿り着けるまでには時間がかかるかもしれませんが、余裕のあるときに少しの積み重ね、スモールステップから始めてみましょう。
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2.不妊治療中の夫婦間の温度差について

治療中は特に、今まで感じたことのない(あるいは薄々感じてはいたけど気にならなかった)夫のまたは妻との感じ方や考え方の違い、温度差に気づくことはないでしょうか。

2-1. よく聞く声

女性が夫について
「話を聞いてくれない。結論を急ぐ」
「気持ちを十分にはわかってくれない」
「夫に不妊原因があるので気をつかってしまう」
「治療に興味がないようだ」
男性が妻について
「治療ですごく落ち込んでいるのでどう励ましたらいいかわからなくて困る」
「ストレスが多い治療なので辞めた方が妻のためになるのかと迷う」
「負担がかかるのは女性なので無理強いはできない」
「治療のことはわからないので妻に任せた方がいいと思う」
不妊治療に積極的でよく奥さまの話を聞いてくれる旦那さまであっても、「男女の感じ方の違い」から、女性は特に孤独を感じやすいかもしれません。
実際に治療で負担を強いられるのは女性です。通院や痛みの負担のほとんどは女性が引き受けなくてはならない現実があります。妊娠出産にいたってもそうです。近年は変化してきたとはいえ、子育ても女性に特に負担が多いものであることも否めません。加えて、妊娠出産には生物学的な適齢期が存在するため、加齢に対し敏感になり、切実感を覚えやすいのも特に女性の方だと思います。

2-2. 男女の違いを理解する

一般的なお話をします。ジェンダー平等が叫ばれて久しいですが、まだまだ男女の考え方の違いは存在していると思います(あくまでも一般論です)。まず、何かストレスフルな出来事が起こったときの対処法に違いが見られることがあります。男性は、解決志向の人が多いのではないでしょうか。「どうすれば良いか」と解決策をまず考えるやり方です。一方、女性は、「大変さを誰かとまず共有したい」と考えるのではないでしょうか。このことが夫婦間に温度差が生まれる一要因のような気がしています。

2-3. 治療中の旦那さまへ

まず治療中の男性にお願いしたいのは、「不妊治療に興味をもってほしい」ということです。ご自身なりの理解でいいので、奥さまがどんな治療をして、その日の通院でどんなことをしたのかを聞いてみてください。不妊治療の知識が、仕事でどうしても学ばなければならないことと同じだと考えるといいでしょう。まず、治療を理解することが「家庭」という組織を円滑に運営していける方略の一つなのです!
加えて、不安や心配、または不満のようないわゆる「愚痴」のような話が出てきたら、一度は否定せずに受け止めてみてほしいのです。なんとなく共感できそうなことには「そうだね」、ちょっと否定したくなるようなことだったら「そうかな〜」でまずは返します。
奥さまが「どうしたらいいと思う?」「あなたの考えは?」などと聞いてくるまでは、解決法やアドバイスは我慢です!そして、奥さまの言っていることが「正しいか正しくないか」で考えないようにしてみてください。「こんなふうに感じてるのかな〜」でいいのです。落ち込んだり悲しんだりしているときには、まずはその気持ちを受け止めてみてください。「落ち込んでるんだね」「不安になるほど大変なんだ」です。励ましはそのあとでも遅くはありません。
また、不妊治療の選択決断を奥さまだけに任せないでください。もちろん、負担を強いられる女性が最終的には決断を下すというのは間違ってはいませんが、一緒に悩み考え、そして夫としての考えもきちんと伝えてほしいと思います。

2-4. 治療中の奥さまへ

不妊治療、妊娠出産について、男性との間に温度差を感じてしまうことは多くの女性が経験していることです。理由の一つは、治療から出産育児にいたるまで、身体的負担が大きくなるのはどうしても女性になってしまう、ということが挙げられます。やはり身をもって感じていないことは理解しにくい、ということは多少なりとも考慮に入れないとならないのかもしれません。身体的な負担は想像することはできても実感することが難しい場合もあるからです。また「子どもを持つ持たない」という選択が、社会的に男性に比べ女性に対してより意識されてしまうという現実があるためかもしれません。ですから、男性が女性の悩みに関して「ピンときていない」とイラついてしまうこともあるとは思いますが、そこは男女の身体的または社会的立場の相違によるもの、と少し割り切ってみるのもいいと思います。いい意味であきらめるのです。違うのだからわからないのは当たり前、と思ってみると少し気が楽になりませんか。多くの女性が似たような悩みを抱えていると感じているので、「どこの夫婦も同じだな」と思ってみるのも役に立つかもしれません。
加えて、男性の「解決志向的」考え方についても理解を示してみてください。「とりあえず話を聞いて」「アドバイスは後で聞くから」「治療を辞めたいわけではない」などと前もって伝えてから話を聞いてもらうのもいいかもしれません。つい一方的に不満を募らせがちですが、伝える努力もときには必要です。

最後に

不妊治療は夫婦の関係性が試されてしまう危機の一つです。ときにはぶつかってしまうことも、相手に落胆することもあると思います。夫婦といえども全く違う一人一人の人間です。分かり合えないことがあるのは当然だと思います。その中でどのくらい歩み寄っていけるのか、すり合わせをしていけるのか、または無理なのか。家族も、試行錯誤をしながら、すぐにあきらめてしまわずに少しずつ作り上げていってほしいと思います。つらいことも多い不妊治療かもしれませんが、全くの他人だった二人が夫婦として、新しい命を心待ちにできるということは、とても素敵なことなのではないかと思います。

執筆者
中島美佐子 木場公園クリニック 心理カウンセラー
資格) 臨床心理士 公認心理師 生殖心理カウンセラー

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