卵子凍結とは?その目的や方法、費用について | 木場公園クリニック-JISART認定 体外受精・顕微授精
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卵子凍結とは?その目的や方法、費用について

年齢が高くなるにつれて、卵巣にある卵子の数が減り、質も低下していくことは、よく知られるようになりました。
当面妊娠の予定はないけれど、将来的には妊娠出産を希望している女性にとって、自分の卵子を凍結保存しておく「卵子凍結」は有効な選択肢といえます。
卵子を急速に短時間で凍結する技術が開発されたことにより、未受精卵子の凍結保存が長期間安全にできるようになりました。
東京都では卵子凍結にかかる費用の助成を開始し、社員の福利厚生の一環として費用を補助する企業も出てくるなど、卵子凍結への注目が高まっています。

こちらのコラムの内容を解説した動画
「【卵子凍結】 木場公園クリニック吉田院長が分かりやすく解説します!」
もご用意しております。合わせてご視聴ください。

  1. 目次

  2. 卵子凍結についての基本的な知識

  3. 年齢と卵子の関係

  4. 卵子凍結のメリットとデメリット

  5. 卵子凍結の費用

  6. 卵子凍結を成功させるための方法

  7. 卵子凍結の体験談

  8. 木場公園クリニックの卵子凍結

卵子凍結についての基本的な知識

女性の妊娠率は35歳前後から減少し、40歳を超えるとさらに低下し、逆に流産率は上昇します。
そこで少しでも若いときの卵子を採取して凍結保存し、将来への備えにしようというのが卵子凍結です。

卵子凍結とは?

卵子凍結(未受精卵子凍結)は、もともと抗がん剤治療などで卵巣機能に影響を受けるおそれのあるがん患者さんや、病気そのものにより生殖機能が損なわれ、妊娠しにくくなることが心配される人に対して行われていました。
これらの「医学的適応」による卵子や卵巣組織そのものの凍結に対して、健康な女性が、加齢などにより妊娠しにくくなることを考えて行うのが「社会的適用」の卵子凍結です。
生殖補助医療である体外受精や顕微授精の技術を用い、排卵誘発剤によって卵巣を刺激して卵子を育て、取りだします。生殖補助医療では、その後に男性の精子との受精が行われますが、卵子凍結ではそれはなく、卵子を単独で凍結して保存します。
保存した卵子は必要な時期が来たら融解して、顕微授精によって受精卵(胚)をつくり、子宮に移植して、妊娠を目ざします。

なぜ卵子凍結が必要なのか?

女性の社会進出が広がるにつれ、晩婚化が進んでいます。しかし、年齢が高くなればそれだけ卵子の数は減り、染色体異常などの発生率も高まってしまいます。
妊娠する力のことを「妊孕性(にんようせい)」と言いますが、この能力には、卵子だけではなく、ホルモン分泌や卵巣、卵管、子宮などの生殖器の働きも関わっていて、それらすべてが加齢とともに衰えていくのです。
女性年齢・妊娠率 いまはまだパートナーはいないけれど、いずれは子どもをもちたいと希望しているなら、卵子を凍結保存しておけば時間の経過をストップし、卵子の質の低下を防ぐことができます。

卵子凍結の流れと成功率

卵子凍結は以下のような手順で進められます。
  • 卵巣刺激

    健康な女性の体では、通常は月経周期に1個の卵子が成熟して排卵されます。しかしこの1個だけを採卵して凍結するのでは、妊娠に結びつく確率はかなり低く、かける時間やコストに見合いません。そこで、できるだけ多くの卵子を採卵するために、不妊治療で用いられる卵巣刺激という方法が必要となります。
    海外でのある研究データによると、35歳以下の場合、10個の凍結卵子があれば、最大70%、15個ならば80%強の確率で最低1人の子どもを出産できるといいます。ですから35歳以下なら少なくとも10個、年齢が上がればさらに多くの凍結卵子をキープしておきたいところです。
    卵巣刺激にはさまざまな方法がありますが、原則的にはホルモン剤である排卵誘発剤を注射して卵巣に直接強く働きかけ、より多くの卵子を育てる高刺激法がとられます。

  • 採卵

    腟から器具を入れて、超音波で見ながら卵巣に針を刺し、卵子が入っている卵胞液を吸引します。
    当院では採卵時の痛みや腟壁、卵巣からの出血を最小限にするために、先の細い採卵針を採用し、局所麻酔または静脈麻酔をかけて行っています。

  • 検卵

    採取した卵胞液を顕微鏡で確認し、卵子を回収します。
    このときの卵子は、卵子の成熟に関係する卵丘細胞と呼ばれる細胞に取り囲まれています。培養液できれいに洗浄したあと、培養器(インキュベーター)で数時間培養します。

  • 卵子の成熟確認

    卵子の凍結前に、酵素によって卵丘細胞を除去する「裸化処理」を行い、顕微鏡で観察して成熟度を評価します。
    当院では原則、受精可能な成熟卵子のみを凍結対象としています。
    なお、卵丘細胞を除いてしまうため、融解した後に精子と受精させるときは、体外受精(精子をふりかける方法)ではなく、1個の精子を卵子に直接注入する顕微授精がマストになります。

  • 卵子の凍結

    超急速ガラス化法(vitrification法)と呼ばれる方法で行います。
    この方法では、細胞内に凍結保護成分を浸透させ、マイナス196℃まで急速冷却することで、卵子を凍結のダメージから保護し、凍結融解後に高い生存率が得られます。
    卵子は凍結保存用デバイス1本につき最大3個まで乗せて凍結し、液体窒素中に保管します。

  • 卵子凍結の成績

    卵子凍結を始めてから2023年末までの当院のデータでは、凍結から融解したあとの生存率は91.3%で、正常に受精できたのは60.5%、子宮に戻す移植が可能な胚になったのは46.3%です。すべての凍結卵子のうち、この移植可能胚にまでたどりついたのは、25.6%、約4個に1個という結果になっています。

年齢と卵子の関係

日々新しい精子がつくられる男性と違って、女性は生まれてきた時に、すでに卵巣の中に将来卵子になる細胞を持っていて、その後にふえることはありません。30歳の女性なら、卵子も30歳年をとっているのです。

年齢と卵子の質の関係

日本産科婦人科学会が公表している生殖補助医療の年齢別の成績を見ると、妊娠率や子どもを得られる生産率は30代に入るとゆるやかに下がり始め、35歳を過ぎると、その減少スピードは加速します。対して流産率は30代後半から上昇し、40代では急激に増加します。
ART妊娠率・生産率・流産率2021 卵子細胞をつくるときには、2つで1対の生殖細胞を半分に分割する「減数分裂」が行われます。年をとった卵子では、この分裂が正常に行われず、染色体の数や構造に異常のある卵子になってしまう可能性があります。染色体異常のある卵子は受精率が低く、受精できても子宮に戻した時に着床できなかったり、仮に妊娠してもその後に流産となるなど、出産までたどりつくことがむずかしくなります。
なお、男性の精子もつくられるときに減数分裂を行います。女性ほど顕著ではありませんが、やはり加齢によって染色体異常などの率は高くなると考えられています。

最適な卵子凍結の時期

2013年に日本生殖医学会が出したガイドラインには、社会的適用における未受精卵子等の採取時の年齢は、「40歳以上は推奨できない。また凍結保存した未受精卵子等の使用時の年齢は、45歳以上は推奨できない」とありました。その後2018年3月の同学会による指針では、「採取時の年齢は、36歳未満が望ましい」とされています。
さまざまな事情があり、女性が卵子凍結を考える年齢も決して一様ではありませんが、卵子凍結するならなるべく早く、できれば30代半ばころまでにトライすることが望ましいと言えるでしょう。

卵子凍結の期限

現在の技術で凍結した卵子は、かなりの長期間であっても、質の低下等を起こすことはなく、保存が可能です。ただし患者さん側から破棄の意志が表明されるか、そのかたが死亡した場合は破棄することになります。通常は1年ごとに保管料が発生するので、その際に保管を継続するかどうかの意思確認がされるケースが多いでしょう。
診察を予約する 03-5245-4122 03-5245-4122

卵子凍結のメリットとデメリット

卵子凍結にあたってのメリットとデメリットをまとめておきます。

卵子凍結のメリット

  • 若いときの卵子を保存しておくことで、加齢による質の低下を防ぐことができる

  • 卵巣や子宮の病気などにかかる前に、卵子を確保することができる

  • 自分のライフプランに合わせて、妊娠出産の時期を先に送ることができる

  • 卵子が確保されていることで、精神的な安定が得られる

卵子凍結のデメリット

  • 凍結された卵子があっても、必ず妊娠できるわけではない

  • 排卵誘発剤の使用の際に、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)などの副作用を起こすリスクがある 卵巣過剰刺激症候群は、卵巣がはれ、おなかや胸に水がたまってくる症状で、重症化すると血栓症などを引き起こす

  • 採卵の際に、出血や感染症のリスクがある

  • 妊娠出産が高齢になるほど、妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病の病気や、出血や早産などの産科リスクがふえる

  • 卵子保管が長期間になればなるほど、ランニングコストがかさむ

卵子凍結の費用

卵子凍結にかかる費用には、診察料、検査代、卵巣刺激に使われる薬剤費、採卵と凍結にかかる技術料、凍結した卵子の保管料などがあります。社会的適応の卵子凍結は保険適用外のため、全額自費負担となります。

卵子凍結の費用

診察代や採卵代は一定ですが、卵巣刺激に使われる排卵誘発剤の種類や量は、ご本人の卵巣機能によって変わるので、かかる費用に差が出ることがあります。また、凍結の費用や保管料は凍結する卵子の個数によって変わります。
卵巣機能をチェックするには、血液検査でAMH(抗ミュラー管ホルモン)の値を調べます。AMHは発育過程にある卵胞から分泌されるホルモンで、卵巣内に残っている卵胞が多ければ、値が高くなります。
また、月経1~4日目に超音波で卵巣内にある小さな卵胞(胞状卵胞)の数を調べることでも、卵巣の能力を評価します。
木場公園クリニックの卵子凍結費用
処 置 金 額
診察代、採卵前検査、卵巣刺激等 約¥150,000
採卵 ¥165,000
別途材料費 約¥30,000
卵子凍結料

1~3個 ¥33,000

4~6個 ¥66,000

7~9個 ¥99,000

10~12個 ¥132,000

卵子凍結の助成金について

全国に先駆けて、東京都は2023年9月から卵子凍結にかかわる費用と、凍結卵子を使用した生殖補助医療への助成を開始し、令和6年度(2024年4月以降)も継続することを発表しています。
助成の対象は東京都に住む18~39歳(採卵実施日の年齢)の女性で、都が開催するオンライン説明会へ参加し、1年以内に医療を始め、卵子凍結後も都の実施する調査に継続的に(2028年度まで)協力することなどの条件があります。
助成額は、卵子凍結を実施した年度に上限20万円、次年度以降、保管更新時の調査に回答した際に、1年ごと一律2万円です。

卵子凍結を成功させるための方法

卵子凍結がうまくいくには、良質の卵子が数多く採取できることが重要です。

健康管理について

残念ながら、卵子の質をよくするための特効薬はありません。しかし、卵子も自分の体からつくられるものなので、日ごろの体づくりが重要です。健康な体を維持することは、妊娠のためだけでなく、その後の出産や育児においても大切です。
まずは栄養バランスのよい食生活を心がけましょう。良質のたんぱく質や脂質をとり、糖質のとりすぎに注意します。ビタミンD、鉄分、葉酸、亜鉛などの栄養素は積極的に取り入れて。
ヨガやウォーキングなどの適度な運動や、十分な睡眠をとる、ストレスをためないなど、基本的な生活習慣を見直して、日々を健康的に過ごしましょう。

医師とのコミュニケーションの重要性

卵子凍結を希望して来院されるかたは、不妊治療に取り組んでいるかたにくらべると、ご自身の月経サイクルや妊娠の仕組みなどへの知識や関心がやや低い傾向があるように感じられます。これはある程度はやむをえないことであり、学会でも、わたしたち医療担当者に、卵子凍結に関する十分な情報の提供や継続的な相談、助言をするよう求めています。
わからないことはそのままにせず、積極的に医師に確認し、納得したうえで卵子凍結に臨んでください。

卵子凍結の体験談

当院で卵子凍結されたかたの体験をご紹介します。

卵子凍結を決めたきっかけ

数年前にインターネットで卵子凍結のことを知りました。卵子凍結の費用を調べたら、高額であったため、悩みましたが、30歳という自分の年齢も考えて、後悔しないように卵子凍結にチャレンジすることにしました。

卵子凍結の経過と結果

卵子凍結を行う月経の3日目から1日1回7日間、排卵誘発剤の自己注射をしました。最初のうちは少し緊張しましたが、慣れてくると、少し痛みはありますが、楽にできるようになりました。
採卵は静脈麻酔を選択したので、眠っている間に終わり、痛みは全くありませんでした。
採卵後は少しお腹が張るときがありましたが、処方された痛み止めの座薬は使わずにすみました。
採卵後2日目の診察で卵巣の腫れの程度を確認してもらって、最終的に凍結できた卵子が14個だったという説明を聞き、凍結した卵子の写真をもらいました。
いまは思い切って卵子凍結を行ってよかったと思っています。

木場公園クリニックの卵子凍結

卵子凍結の成否を左右するのは、適切な卵巣刺激を行って、より多くの成熟した卵子が得られるかどうかです。また、将来卵子を使用する時は生殖補助医療が必要になります。生殖補助医療の経験と実績こそが施設選びのポイントと言えます。

不妊治療に実績のある施設

木場公園クリニックは、女性と男性両方の不妊治療を同時に行える施設として、開院以来25年以上にわたり、多くの患者さんの治療にあたっています。その治療実績から、卵巣刺激には、FSH(卵胞刺激ホルモン)の注射と飲み薬の黄体ホルモン剤を併用する「PPOS法」や、FSHの注射に飲み薬のクロミッドを併用する「FSH‐クロミッド法」を採用しています。これらは他の方法に比べ、注射の回数が少なくてすみ、薬剤のコストも低いので、患者さんの体とお財布の負担を軽減します。

安全第一のシステム

患者さんのたいせつな卵子を扱う培養士は、卵子凍結・融解の講習を受け、トレーニングを積んだ培養士のみがあたっています。また万が一にも卵子の取り違えなどのミスがないよう、採卵から培養、凍結までの工程で、必ずダブルチェックを行っています。

仕事との両立

卵子凍結を考えるかたの多くは、仕事にも積極的に取り組んでいる、いわゆる「バリキャリ」の女性でしょう。初診からの一連の流れの中で、採卵日以外にも検査や卵胞の成育度のチェックのために、少なくとも3~4回の通院が必要です。当院ではスケジュール調整がしやすいように、曜日によって夕方以降の診察や、土曜診察の時間を設けて、仕事との両立をサポートしています。
卵子凍結のゴールはもちろん子どもを得ることですが、現状の医療でそれは保証されてはいません。
しかし将来凍結卵子を使うかどうかは別として、卵子があることが現在および今後の人生の中で、ご本人の支えになることもあります。医療に携わる者として、そんな患者さんの希望に寄り添うことを大切にしたいと思っています。
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着床前胚染色体異数性検査
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東京の木場公園クリニックは、日本産科婦人科学会から、「反復体外受精・胚移植(ART)不成功例、習慣流産例(反復流産を含む)、染色体構造異常例を対象とした着床前胚染色体異数性検査(PGT-A)の有用性に関する多施設共同研究」の研究分担施設として承認を受けています。

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女性の実年齢と卵巣年齢がイコールではないため、それぞれの方の卵巣の状況に応じて刺激法を選んでいます。
当院では高刺激の患者様と低刺激の患者様の割合は半々です。
高刺激と低刺激のどちらがいいのかではなく、体外受精や顕微授精を行う施設として重要なことはいろいろな卵巣刺激法を選択肢として持っていることです。

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