胚の選別と胚移植 | 木場公園クリニック 

不妊治療・不妊症・男性不妊・体外受精・顕微授精など高度生殖医療

HOME不妊治療成功のポイント胚の選別と胚移植


不妊治療成功のポイント
胚の選別と胚移植
胚の選別
ヒトの胚は、見た目がきれいな胚でも約40%に染色体異常があると言われています。外観が悪い胚では染色体異常の割合が増加します。つまり、染色体異常の確率が少ない胚を選んでなければ、医師が一生懸命胚移植をしてもいい結果には結びつきません。
良好な胚を選択するために、採卵日の卵、前核期胚(1日目の胚)、3日目の分割した胚、5日目の胚盤胞とそれぞれ指標を決めて評価を行ないます。

採卵日翌朝の胚では、雌性前核と雄性前核の核小体の状態、極体と前核との位置、Halloがあるかないか、また、採卵日翌日の夕方には胚を再び観察して2分割しているかどうかをチェックします。早期に2分割している胚は形態良好胚(いい胚)になる確率が高いと報告されています。
3日目の胚の選別には、割球数、フラグメント率、多核のある割球の有無、割球の大きさの差を用います。割球数は、3日目の朝胚を観察したのか、夕方に観察したのかによっても評価が異なってきます。3日目の朝胚を観察した場合には、8細胞に分割している胚がベストです。
フラグメントとは、胚の中にある割球以外のブツブツした余分なもののことです。フラグメントの占める割合が少ない胚ほど、胚が染色体異常である確率が低くなります。胚が染色体異常である確率は、フラグメント率が0%では約55%であるのに対して、フラグメント率が30%以上では約90%となります。
割球の大きさについては、割球の大きさに差がない胚ほど染色体異常が少なく着床率が高くなります。
多核(細胞の中に核が2個見える)のある割球がある場合には、胚が染色体異常である確率が高くなります。
通常3日目に胚移植を行うことが多いと思いますが、1日目と3日目の胚の各種の指標を参考にして、どの胚を胚移植するかを決定します。
実際に、木場公園クリニックでは、人でも○○小学校出身、○○大学△△学部出身というように、3日目までは胚1個毎の履歴がシートに詳細に記録されています。その履歴をもとに、医師とエンブリオロジストとでミーティングを行なって、どの胚を胚移植するかを決定します。
数回胚移植を行なっても着床しない場合、子宮外妊娠の既往があるなど卵管因子のある場合、非閉塞性無精子症などの男性因子がある場合、採卵数が多く3日目で胚の選別が困難な場合、患者様から胚盤胞培養の希望の強い場合には、5日目(または6日目)まで胚を培養します。胚盤胞の選別は、木場公園クリニックではDavid Gardnerの分類(表)に従って選別を行ないます。
胚盤胞には内細胞塊(胎児になる部分)と栄養芽層(胎盤になる部分)があります。Gardner([胚盤胞(Gardner)の分類]参照)は胚盤胞のステージ(時期)と内細胞塊と栄養芽層の細胞数で胚盤胞を分類しています。分化が早く細胞数の多い胚盤胞ほど良好な胚盤胞です。
胚盤胞(Gardner)の分類
A.胞胚腔(blastocele cavity)の広がりの程度
1. 胞胚腔が全体の1/2以下の初期胚盤胞
2. 胞胚腔が全体の1/2以上の胚盤胞
3. 胞胚腔が全体に広がった胚盤胞
4. 胞胚腔が拡大し透明体が薄くなった拡張胚盤胞
5. 透明体よりtrophectodermの一部が抜けかかった胚盤胞
6. 透明体より完全に脱出した胚盤胞
内細胞塊(inner cell mass:ICM)の細胞数と形態
細胞数が密なものがA、粗なものがCでA~Cに分類
栄養芽層(trophectoderm:TM)
細胞数が密なものがA、粗なものがCでA~Cに分類
例)胞盤腔が拡大し透明体が薄くなった拡張期胚盤胞でICMとTMの形態および細胞数が良好なものは、4AAと表記する。
胚移植
胚移植は医師が行なう技術の中で、最も妊娠率に影響する重要な部分です。それは、いくらよい胚を作って選別したとしても、胚移植できっちりと子宮腔内に胚が戻っていなければ妊娠は期待できないからです。胚移植は医師の力量によって大きく差が出てくる部分です。では、胚移植を成功させるためにどのような準備をして、どのような方法で行なう必要があるかについて説明します。

ゾンデ診
ゾンデ診とは、卵巣刺激を行なう前周期に、尿をためた状態で胚移植時に使用するカテーテルを用いて、子宮の長さ・子宮の曲がりやカテーテル挿入時の方向を調べることです。子宮頚管に細い部分がないかもわかります。
カルテにはできるだけ詳しく「こっちから入って・・・」などと記録しておきます。これによって本番でイメージがしやすく、ゆとりをもって胚移植に臨めるからです。
また、子宮頸部にポリープがあると、胚移植時に出血することがあるため切除します。
前周期にゾンデ診を行なって本番の胚移植を行なうと、妊娠率・着床率が高くなります。
膣と子宮頸管の細菌培養
前周期のゾンデ診と同時に、膣と子宮頸管の細菌培養を行ないます。胚移植をした後の、カテーテルの先を細菌培養し陽性だった場合は陰性だった場合とくらべて妊娠率が低いこともわかっています。
子宮頸部に細菌感染があると、子宮内膜に慢性的な炎症がおきている場合が多く、それが子宮内膜の着床能力を下げたり、胚移植時に混入される頸管粘液中にある細菌によって子宮内膜の性状が変化したり、細菌が直接胚の発育を阻害したりするので細菌培養が陽性時には抗生物質による治療を行ないます。
実際に細菌培養が陽性であった時には、検出された細菌の種類によって、経口の抗生物質を使用したり抗生物質の膣錠を使用したりします。
子宮鏡と子宮頸管拡張
前周期のゾンデ診で胚移植用カテーテルの挿入が困難な場合には、胚移植時に少しでもカテーテルが挿入しやすくなるように、前周期に子宮鏡を行ないます。子宮頚管が狭窄している場合は、前周期に子宮頚管の拡張を行ないます。静脈麻酔下にヘガールという棒のような器械を細いものから順に9番まで挿入していきます。
しかし、子宮頚管拡張術は子宮頚管が狭窄している場合に行うため、無理に挿入すると子宮を穿孔する危険があります。ですので、とても慎重に行います。
胚移植直前(例えば胚移植3日前など)の頚管拡張は、胚移植は容易になりますが、子宮内膜が損傷され、妊娠率が非常に低くなるため、子宮頚管拡張は必ず卵巣刺激を行なう前周期に行ないます。
胚移植当日:胚の説明と患者様の本人確認
胚移植当日はホルモンコーディネーターからすべてのホルモン検査の結果などについてお話をさせていただいた後、診察室で医師から説明があります。体外受精・顕微授精報告書と写真を見ながら、
採卵数と受精卵数について
1. 当日胚移植予定の胚とその数について
2. 分割やフラグメントの状態などから、医師とエンブリオロジストが最良と思われる胚を選別します。
3. 透明体開口法(AHA)をおこなっている場合はその説明も行ないます。
4. 胚移植に用いなかった余りの胚は追加培養を行なって、良好な胚盤胞になった胚は患者様のご希望があれば凍結保存します。
などの説明です。 胚移植予定の胚や戻す数について特に問題がなければ、緊張しすぎると子宮の収縮が多くなるため、気持ちを落ち着かせるためにセルシン2mg(精神安定剤)を内服していただきます。
胚移植時は可能であれば、御主人様にも入室していただきます。
患者様の取り違えは絶対に許されませんので、本人確認は何度も行います。採卵・胚移植室に患者様が入室したら、胚移植のカテーテルに胚を吸引するのを担当するエンブリオロジストと補助をするエンブリオロジストが患者様にあいさつに来ます。次に、患者様自身で自分の氏名・生年月日を医師とエンブリオロジストの前で言ってもらい、本人確認をします。
頚管粘液の除去
子宮頚部を洗浄して、頚管粘液をできるかぎり除去することは、確実に胚移植を実施するためにとても重要なポイントになります。頚管粘液が残っていると胚移植カテーテルの先をつまらせて蓋をするようになり、シリンジを押してもうまく胚がカテーテルから出なかったり、余分な頚管粘液を子宮腔内に注入することになるからです。
いかに出血をさせないように頚管粘液を取り除けるかが、重要なポイントです。出血をおこしてしまうと妊娠率は低下します。
子宮頚部洗浄の流れ
1. 膣鏡(クスコ)をゆっくりと慎重に膣内に挿入します。(クスコも乱暴に挿入すると子宮頸部から出血します。)
2. 37℃に温めた生理食塩水20mlで膣内を軽く洗浄します。
3. 続いて、子宮頚管内洗浄用カテーテル(北里)を子宮頸管約1cmにそっと挿入し、m-HTF5mlで子宮頚管内を洗浄します。あまり強く洗浄すると子宮腔内に培養液が入ることがあるので、ゆっくり洗浄し、子宮頚管内の頚管粘液を除去します。 もしも培養液が子宮腔内に入った場合は、30分から1時間ぐらい歩いてきてもらいます。すると、子宮腔内の培養液はほとんど出てしまいます。

超音波下の胚移植
超音波下に胚移植を行ないます。超音波下に胚移植を実施する利点は、
1.確実に子宮腔内に胚移植できるのが確認できる
2.子宮底に胚移植カテーテルを当てることがなくなる (一度子宮底に当てて戻してくることは絶対にいけません。当てただけで子宮は収縮するからです。胚移植時に子宮が収縮するということは、着床率が低下し、子宮外妊娠率が高くなります)。
3.尿がたまっているので、子宮が前屈の方では胚移植が容易になります。
4.スタイレット(硬めのチューブ)を使用しなければならない場合でも超音波で見ながら挿入すると進める方向が分かりやすくなります。
尿をためた状態で超音波のプローブをお腹の上から当てるので、患者様は苦しいのですが以上のような利点から木場公園クリニックでは全例、超音波下に胚移植を実施しています。
経腹超音波で胚移植カテーテルが確認できない時には、経膣または経直腸下に超音波を行ないます。超音波を使用しないで胚移植を行なうと妊娠率は低下します。
胚移植カテーテルの選別
胚移植を成功させるために、やわらかいカテーテルを使用して、胚移植を実施することは重要です。
まず、経腹超音波下に約5cmまで、トライ用のウォレスカテーテルを挿入します。挿入できた時は新品のウォレスカテーテル(Edwards-Wallace Embryo Replacement Catheter(Wallace):REF 1816)に胚を吸引して、胚移植を実施します(ウォレスカテーテルは内筒と外筒が合体した状態で使用しないとウォレスカテーテルの利点を最大限に発揮できないので外筒のみを先に入れて、内筒を後から挿入するスタイレットのような使い方はしてはいけません)。
ウォレスカテーテルが挿入できない時は、北里カテーテル(北里サプライフレスポイトETカテーテル:FS-ET30S-6Fr)、北里カテーテルが挿入できない時は、北里スタイレット(北里サプライフレスポイトETカテーテル6Fr外筒:FS-ET6-G17)を使用します(図4)。
スタイレットを使用する時は特に慎重に出血をさせないようにスタイレットの行きたい方向に進めるという感覚で経腹超音波下にスタイレットの方向を確認しながら挿入します。
スタイレットも挿入できない時に初めて、塚原子宮膣部鉗子を使用します。子宮膣部鉗子を使用すると子宮収縮がおこるため、胚移植が非常に困難な場合を除いて、安易に子宮膣部鉗子を使用することはありません。
胚移植
胚移植は、カテーテルの先に魂を込めて集中力を高めて実施します。
医師側のすべての準備が終了すると、培養室内に待機しているエンブリオロジストチームに実際に胚移植に使用するカテーテルの種類を伝えます。
培養室内より「○○様のディッシュだします」と声がかかるので、再度氏名の確認をします。
患者様にもTVモニターに写っている胚の数・カテーテル内に確実に入っていく様子を確認していただきます。
胚移植実施者は、先端に触れないようにカテーテルを持ち、まず空気層を2μl作り、次に約3μlの培養液とともに胚を吸います(胚移植時の子宮腔内に注入する培養液と空気の量を極力少なくすることは子宮外妊娠の発生頻度を少なくして妊娠率を上げるために非常に重要なポイントです)。胚移植に使用する培養液は、胚を培養しているものと同じものを使用しています。
腹部エコー下にカテーテルの先端を確認しながら、クスコを左手で持って子宮の傾きを調節しながらゆっくりと慎重に挿入していき、子宮底1cmから1.5cm手前のところに胚移植を行ないます。約10秒間した後、腹部エコーで胚移植したところとカテーテルの先を見ながらカテーテルを反時計まわりに90度、時計まわりに90度回転させながらゆっくりと抜去します。(粘液がうまく切れない時は、右手にバイブレーションをかけながらカテーテルを抜きます。)
抜去後のカテーテルはすぐにエンブリオロジストに渡し、TVモニターを見て胚がチューブの内側や外側に残っていないか確認をします。
【胚移植後の安静時間】
子宮収縮をおこさないようソフトにきちっと胚移植できた時は、長時間のベッド安静は必要ありません。
胚移植カテーテルがスムーズに入らず、塚原子宮膣部鉗子(子宮膣部を引っ張るためのもの)を使用した時は、ウテメリンという子宮収縮抑制剤を1錠内服して、15分間ベッドで安静にしていただきます。
不妊治療成功のポイント